鶏の視覚と聴覚

 鶏は近視で色盲、あまり視覚は良くないと言われています。
 しかし「赤色」は判断でき、「赤色」に強く反応すると言われます。赤は強さを表し、鶏冠が大きく赤いほど強く立派な雄鶏と言われます。
 本当にそうなのでしょうか?
 鶏冠が目立たない育雛時、他の雛たちより餌を多く食い、一歩先んじて大きくなり、ペック・オーダー(鶏グループでの強弱の順列。順列で上位を得た鶏は下位の鶏より自由に多く餌を食べ、餌の選り好みが出来る)に勝ち抜いた鶏はより身体も大きくなり、強くなります。「鶏冠が大きく赤いほど強く立派な雄鶏」ではなく「強い鶏ほど栄養が良く、赤い立派な鶏冠をもつ」ようです。
 同じ様な言い回しに拘るのは、現場で鶏と毎日接していますと「鶏は赤色に強く反応する」と言われる定説に少々疑問がわくようなことに出会います。
 「鶏は赤色に反応するから、赤い服を着て鶏舎に入らない方がよい」と言われます。しかし何度か赤い色の服を着て鶏舎に入って実験してみますが、鶏達の反応は殆ど変わりがありません。鶏が興奮して鶏舎内を走り回ったり、大声で鳴いたり、私に突進してきたりしません。鶏から「今日の赤い服はきれいですね」等とのお褒めの言葉もありませんが。いつもと変わらない日常です。
 私が「今日は赤い服を着たぞ」と意識して、鶏達が赤い色に反応して興奮するのではと思い警戒して鶏舎に入りますと、私の警戒心が鶏に感染したかのように鶏舎内がざわつき、私をめがけて飛びかかってくる鶏もいます。
 着ている服に関係なく、廃鶏などの「非日常時」は鶏達は騒ぎます。
 鶏達が騒ぐのは着ている服の色が原因ではなさそうです。
 訪ねてきた人が初めて鶏舎に入るときも、往々にして鶏に飛びかかられます。久しぶりに帰ってきた息子や孫が鶏舎に入りますと同じように鶏達が騒ぎます。
 これらのことから、鶏は相手の警戒心や悪意を見抜き、優しく接する飼い主は判断できると言う方もいます。これは鶏を買い被りすぎのようです。それほど鶏はお利口ではありません。
 では鶏達は「日常と非日常。飼い主とそれ以外の人」を何で判断しているのでしょうか?
 耳、聴覚のようです。
 鶏の聴覚は非常によいです。鶏達の鳴き声を聞き分けますし、小さな音も聞き分けます。私の軽トラックのエンジン音とよその人の軽トラックのエンジン音の違いも聞き分けます。私の軽トラックのエンジン音は「餌を貰える喜びの音」です。ほかの人の軽トラックのエンジン音は「聞き慣れない音」で鶏達に警戒心を呼び起こします。
 それほど鶏の聴覚はよいです。
 この良い聴覚で鶏達はわずかな足音の違いを聞き分けて、鶏舎内に入ってきた人を飼い主か(日々と同じ足音)、それ以外の人かを判断しているようです。
蛇足ですが、闘牛の牛は本当に赤い布に反応して興奮しているのでしょうか?
 ご存じの方がいましたらお教えください。