鶏の一日と一生(2)

 雄鶏は「亭主元気で留守が良い」の言葉のように、平和な鶏舎では目立たない存在です。常日頃目立たない雄鶏ですが敵を察知すると、瞬時に大声を張り上げ果敢に敵に向かって行き雌鶏を守ります。目があまり良くない鶏ですので「音や異常な動き」で危険を察知するので、私の足音や動きを敵と頭に刷りこみ、私が鶏舎に入るといつも飛びかかってくる覚えの悪い雄鶏もいます。
 鶏舎に熊ネズミやバッタなどの特別な動きをする「餌」が入ってくると、雄鶏は「コォーッ、コォーッ」と低いうなり声で雌鶏を呼び、その特別な「餌」の在処を教え、譲ります。そんなときの雄鶏はちょっと得意そうな顔です。逆に雌鶏が特別な「餌」を見つけたなら、ほかの鶏にとられないように嘴で挟み慌てて(この急な行動でほかの雌鶏に気づかれますが)鶏舎の隅まで運び、そこですべてを独り占めしようとします。
 鶏舎の中で強弱の定まった雄鶏たちは「本気で」喧嘩をすることは殆どありません。
 暇に任せて(殆どは雌との関係で)小競り合いは起きますが、2−3回羽で叩き合いますと相手の強さが確認でき、弱い方の雄鶏は後ろを見せて逃げ出します。
 強い雄鶏に喧嘩を売って血だらけにボコボコにされるより、争いの基である雌鶏は相手に差し上げ、「ときの声」は我慢して平和に生きる雄鶏が増えてきました。(「ときの声」は自分の強さ威厳を表す声で、近くに自分より強い雄鶏がいるときは「ときの声」を自由にはあげにくいです)
 夕方の3時頃から食事の時間になります。給餌は1日1回ですが、1日中餌箱に餌があるようにしています。正確に言いますと次の給餌の1時間ほど前に餌が無くなり、鶏に少々の空腹感を感じさせ、次に与える餌を良く食べるようにするのがにわとり屋のプロの技です。(笑)
鶏が食事にありつく餌箱はだいたい決まっています。強い雌鶏が一番良い餌場をとり周りはいつもの仲間で固められます。強い雌鶏は好きな固形のトウモロコシを中心に食べ、弱い雌鶏は後に残った糠などの粉の部分を多く食べます。食事の時間は雄鶏は雌鶏のようにすぐに餌に飛びつかず、先ずは群れの安全のための警戒に時間を割き雌鶏が食べてから食事に取りかかります。(雄鶏を美化しすぎです。正確に書きますと、雄鶏は卵を産まないために必要とする栄養素やエネルギーが雌鶏と比べて少なくすみます。そのため「空腹感」が少なく慌てて餌に飛びつかないだけのようです。何日か鶏に給餌しないで空腹感を与え、その後に餌を給餌しますと雄も慌てて餌に飛びつきます)