鶏の餌(1)

 品質の良い卵を生産するには鶏の飼い方、鶏種の選択、鶏に給餌する餌の品質などがあります。これらの中でも「鶏に食べさせる餌が一番大切」と私は思います。
 極端な話、私が最悪な飼い方だと思うケージに閉じこめられたウインドレス鶏舎の鶏でも、プロの養鶏家が鶏の体調を見極め良質な餌を与えた鶏の卵は、鶏の飼い方を学びもせずに適当な餌を与え「放し飼い、自然卵」とイメージだけを追い求めている鶏の卵より品質では勝ると思います。鶏の福祉や環境に与える負荷は問わない物とします。
しかし現実のウインドレス鶏舎では、企業として生き残るためにコンピューターで「餌効率、高産卵率、低コスト」などが日々求め続けられ、生き物としての鶏や卵を食べる消費者を忘れた戦いが続けられています。
 現代の養鶏業界は「効率化」という分業体制が確立されています。
 殆どの養鶏場では卵を産む寸前まで育てられた大雛を育雛企業より購入して、餌は飼料会社から「完全配合飼料」を購入して、採卵農場はただひたすら卵を産ませます。
 雛を育てられなくとも、餌の配合がわからなくてもコンピューターで損益の計算ができれば鶏が飼える(?)時代です。「雛も餌もプロに任せる」は体の良い方便です。
 このような分業体制では「どのようにして安い大雛を、安い完全配合飼料を購入してコストを抑え、1円でも高く卵を売るか」が利益、企業の存続に繋ります。
 勿論、育雛会社もできるだけ安いコストで見栄えの良い大雛を育て高く売りたいと考え、「完全配合飼料」製造会社も合成ビタミンや合成アミノ酸を利用してできるだけ安いコストで餌を作るために努力をします。養鶏業界には「良質な餌を、鶏の飼育環境への思い・知識」などが入り込む隙間はないようです。
 原料を(産卵を行う大雛に完全配合飼料)できるだけ低価で買い入れ、徹底的に無駄を省き製品(卵)の生産原価を上回る単価で販売する。
 企業活動としては当たり前のことですが、養鶏企業が扱う生産活動は生き物である鶏によってなされ、生産される商品は人間の命を繋ぐ「食べ物」であります。鶏は機械のように管理計算できない生き物です。
 養鶏業界は分業化することにより、肝心要の『商品への責任』は曖昧にされ、鶏の基本的な福祉と卵の品質への責任が捨て去られています。