効率を求めて

 行きつけの農協のガソリンスタンドがセルフサービスになりました。「効率化によりリッター当たり最大4円ほど、今までより安く出来そうです」と係員は自慢そうに話していました。ガソリンが安くなるのは大歓迎です。
小さなスーパーが大きなスーパーに飲み込まれ、その大きなスーパーがショッピングモールに淘汰されていきます。そのショッピングモールがネットショップの攻撃にあえぎ始めているようです。
 私も食料品などの日常品以外は殆どアマゾンでネットショップしています。ネットショップは店員との対話の煩わしさから解放されます。(効率化のために正社員を排除して、最低賃金ぎりぎりで雇われているパートやアルバイトの店員が増えています。そのようなお店に行くと商品知識は無い、接客対応のイロハも知らない、不快にさせられることが多いのが現実です。「社員を育てる」なんて死語のようです。) 
 ネットショップでは価格を比較して、最低価格を簡単に選べて、品数は豊富、配達は早い。と、便利です。
製造業の多くの企業は生き残るために原材料は最低価格の国から仕入れて、最安値で製品化できる国に進出しています。
 このように効率を求めて企業がグローバル化を推し進める波が農業の世界にも影響をもたらしそうです。
 TPPへの参加も本格的に動き出し「世界と戦える農業」「農家の所得倍増計画」と勇ましい号令が上の方で飛び始めています。
「世界と戦える農業」「農家の所得倍増計画」はけして夢物語ではありません。問題は今の農家の内の何%が勝ち組に入れるかです。戦後、家内工業的なバイクメーカーは日本だけでも千社以上有ったようです。ホンダ、カワサキ、スズキ等数社が勝ち抜き世界的メーカーになりました。
 農業、農村のことを少しでも知っている人なら爆笑してしまうような「五反歩農家を百人分集めて五十町歩の水田を企業的に経営する。日本の品質の良い米なら、十分世界と戦える」等と真剣に発言する農業評論家もいるようです。(数字は分かりやすいように私が単純化しましたが、これに似たような農業の規模拡大論者がいます。休耕地が埼玉県の面積以上にある。これらを「上手く」活用したら農業の規模拡大が出来ると言う農業評論家もいます。多くの土地は条件の悪い農地です。だから休耕地になったのです。「上手い」活用方法を教えてください。)
 勿論、農地、農業の規模拡大に成功する人、休耕地の活用に光明を見いだす人は一定の比率で現れると思います。勝ち抜いたバイクメーカの比率よりは多いでしょうが、勝者が一割を超すにはよほど大胆な農政の転換と、補助金をつぎ込まなければならないと思います。
 一部の農家による「世界と戦える農業」「農家の所得倍増計画」は達成されると思いますが、これが本当に効率の良い行政なのでしょうか?これらは幸せに繋がる農政なのでしょうか?
 ガソリンスタンド、スーパー、工場などで人減らしが進んでいます。
 それと同じ事を農業で行うことになります。五反歩の農地を耕し、わずかな現金収入で生活している人達から農地を取り上げ農地を集約したら別の問題が起きます。(生活に困る農家ほど農地にしがみつき、農地の集約化による規模拡大は「絵に描いた餅」に終わることが多いと思います。)
効率化を享受(価格の低下)している私達ですが、ここらでもういちど考え直す必要があるかも知れません。
 百人の農地を1人で耕したら、99人は仕事に溢れます。この99人は新たに仕事を見つけられるでしょうか?
 職業訓練所、生活保護、治安の乱れ、生活の乱れからの医療費の増大、地域環境の悪化、、。小農を潰すことは行政の効率化、人間の幸せの間逆を行くように思えます。