ムラの農地は誰が耕す(私案の思案)

私案の3が本命だと思います。「本命」と言う言い方が正しいかわかりませんが、日本が、農村が、農業が変われなければ必然的に私案3の可能性が高くなると思います。
 そして日本は変われないような気がしています。補助金を握っている行政と、農家の経済を握っている農協の変革を本心から求められない農村・農家が問題の核心だと思います。そう、一義的には私達農家の問題です。
 鞭(法規制)とあめ玉(補助金)には私達農家は弱いです。「農業、食料」について消費者と対立するより、私達農家が消費者と共同して行政、農協に「生活者に密着したより良い農業」への変革を求める覚悟を持つべきだと思います。
 近年、有機農業を始め多くの農家が消費者と顔の見える付き合いを始め、変われなかった農業の世界に新しい芽吹きが感じられます。しかし農法により、言われなき農家の差別化、区別化が進み、農家の分断につながらないように注意が必要です。
 不幸にして私案3のような時代が日本に来たとき、日々真面目に汗水流して食料、農地の大切さを感じている百姓は「それ見たか」と一瞬「溜飲を下げる」かも知れませんが、そのことにより受ける社会全体の不幸が大きすぎます、何とか3だけは避けたいと私は思います。(孫世代のためにも)
 先の敗戦により街の多くの人達が鍬や鋤を持ち、昭和の開拓民としてなれない百姓仕事に勤しみました。戦前、戦中の永い苦難の時期を耐えて過ごし、新しい平和に夢を抱きて就農した「昭和の開拓民」でした。
 それでも開墾、開拓の苦しさで途中で挫折した就農者も多かったようです。耐えることを知り、粗食質素を当たり前として生きてきた「昭和の開拓民」でも多くの挫折者、離農者を出しました。
 豊かさに溺れて生き、農作業のイロハも知らない「平成の俄開拓民」の就農結果は暗く、悲惨な景色が予想されます。ムラが荒れて、街が荒れて、悲劇が悲惨な事件を呼び起こし、農村が対立と暴力に支配する世界になります。3は何とか避けたいです。
平成17年の国勢調査によりますと、中山間地の人口は約1740万人です。一寸データーが古くなりますが総世帯数は平成12年度のデーターで576万戸です。
576万戸の中山間地に200万戸(人)の新規就農は『夢』です、3兆円の補助金も現実的ではありません。576万戸の中山間地世帯に、総戸数の約1割の50万戸の新規就農世帯が入り、ムラの農地を耕すのは実現可能の数字です。
 私も補助金農政は嫌いですが、現代の経済組織が大きく変わらない限り、日本の中山間地の農業は行政で補助しない限り、荒れて崩壊します。個人の奇特な頑張りだけでは無理があります。農家と街の生活者のための透明な補助システムをどのようにして作るかだと思います。
私案2は魅力的ですが、ムラ人達は地縁血縁、親分子分、数世代前の死んだ先祖の「貸し借り」、先輩後輩、面子、家柄、目の前の損得と息が詰まるほど縦糸と横糸でがんじがらめにされています。
ムラは事の善悪より貸し借りに重きを置く社会です、そしてそれが世代を超えてムラで生き延びる知恵です。ムラの良き人ほど動けないのも現実です。
 このように閉塞気味のムラに約1割ほどの新しい人達が入ることにより、ムラが、地域が、農業が変わることを夢見ています。で、私は1と2の折衷案です。