鶏の知能(2)

 日本の採卵鶏のほぼ100%が一代雑種交配鶏です。自分の農場で雛を孵化しても良いのでしょうが、一代雑種交配鶏から産まれる雛は「餌効率、産卵率、喧噪性」などの安定性に問題があり、年に数回しか使わない孵卵器は過剰投資です。自分の農場で雛を孵化して一番頭が痛いのは、半分産まれてくる雄鶏の「処理」問題です。
 そんな、こんなで、我が家の鶏も一代雑種交配鶏で、毎年孵卵業者から雛を買って育てています。でも、遊びで我が家の鶏に卵を抱かせて雛を孵化させる事があります。
 卵を抱き始めた鶏は、まだ弱い雌鶏ですが(卵を産まないで「生産をさぼっている」と言う恥ずかしさのためか、餌を食べるときは他の鶏の虐めにも耐えて「すみません、すみません」と頭を垂れて餌をついばみます)、ときの経過と共に雌鶏は水にも餌にも見向きもしなくなり、嘴で卵をひっくり返し「我が子と出会うとき」を待ちます。
 「十月十日」ではなく、21日後(鶏に卵を抱かせますと外気温により21−25日程まで孵化にかかる時間には幅があります)無事に雛が卵から孵り、「ピィー、ピィー」と雛の産声と共に雌鶏は母鶏に変わります。
 「早く孵った雛は母鶏から離れて遊び始め、次に孵る卵を温めて、嘴打ち(はし打ち)しない卵は足でけり出し」母鶏には気が気でない一時です。
 その雛が遊びに夢中になり、母鶏から遠く離れて他の鶏の近くまで行き虐められそうになると、雛の危険を知らせる鳴き声と共に母鶏は全身の羽根を起てて、猛然と雄鶏にまで向かっていきます。その剣幕と言いますか、母鶏の迫力に他の鶏たちは「ピィー、ピィー」とうるさく鳴く生き物を虐めてはいけない事を悟ります。母は強です。(鶏たちには突然現れた雛が自分たちの仲間、子孫だと言う意識は無いようです。「我が子」という思いは、卵を抱き、孵化した鶏だけが得られる感情のようです)
 雛がで揃い母鶏の後ろに従い、餌を食べ、水を飲み、遊びます。2ヶ月も過ぎますと自然に子離れ、母離れします。母鶏はまた卵を産み始めて、卵を抱き、雛が孵り育てて、このような繰り返しが鶏の自然な姿のようですが、現在採卵鶏に使われている一代雑種交配鶏は、このような雛を孵す能力は不要な物としてて遺伝子から取り除かれる運命のようです。
 子どもを慈しみ、守り育てて、自然に子離れ、母離れする鶏は「お馬鹿」でしょうか?