たまごのコレステロール(上)

卵のアミノ酸組成は「食べ物の理想」に近く、昔は病人のための「完全栄養食品」と言われ、卵は庶民に薬のように扱われた貴重な食べ物でした。
 そんな貴重な卵も、戦後の養鶏家の努力と鶏の品種改良により、一羽当たりの産卵数が戦前の鶏に比べて格段に増え、輸入飼料による養鶏業の規模拡大化と共に大量生産された卵は巷に溢れて、卵はどの家庭でも当たり前に食卓に乗る食べ物になり、「ありがたみ」は消えてしまいました。
 一人あたりの卵の消費が増えると共に(日本人は世界で一番卵を食べています。そろそろ「量より質」に戻り、卵の消費個数を減らす方が良いかと思います。)卵黄に含まれるコレステロールが問題視され、「卵と言えばコレステロールコレステロールと言えば卵」と過剰に反応され、多くの人たちに卵のコレステロールは恐れられ、嫌われています。
 「食べ過ぎから」から現代の人間に恐れられるコレステロールですが、コレステロールは脂質の一種で、細胞膜を作る上で重要な材料であり、脂肪の消化に必要な「胆汁酸」や、「性ホルモン」の原料にもなり、動物が生きていく上で不可欠な栄養素です。人体のコレステロール値が低くなると血管が破れやすくなったり、免疫力が低下するなどの弊害も生じ、コレステロールは人体にとって非常に大切なものです。
 またコレステロールは食物から摂取される以外に、私たちは肝臓をはじめ体内でコレステロールを作り出しています。その作り出されるコレステロールは1日に必要な量の約80%にもなり、食物から摂取する量の4倍も多いです。
 確かに卵のコレステロールの含有量は他の食品に比べて比較的多く、卵黄中に約1.6%(卵1個につき250〜350mg)含まれていますが健康な人であれば、体が血中コレステロール値を調節してくれるため、卵から摂取するコレステロール量を過度に気にする必要はないようです。
けだるい秋の午後