卵の賞味期限  (3)

 卵殻の次に白身が黄身を「サルモネラ菌」等の細菌から守ります。
 白身で細菌が増殖しにくいのは、白身に含まれるリゾチームなどのエンザイム(今流行の酵素です。解毒など生命を維持するために必要な活動を助けます。熱をくわえると破壊します)の力によると言われます。
 また「サルモネラ菌」が増殖するには鉄分が必要ですが、白身には鉄分はなく万が一卵殻から「サルモネラ菌」が進入しても、人間に害を与えるまで「サルモネラ菌」は増殖することはできません。
 鶏は人間に卵を美味しく安全に食べて貰うために、クチクラ層や卵殻、卵白で何重にも細菌から守っているのではありません。全ては元気な子孫を残すためです。その卵を私たちがいただいているのです。このことが一番大事な考え方だと思います。「雛が孵る元気に生きている卵」が卵の基本だと思います。
 ここまでお話をしてきますと「賞味期限」の本来の姿が見えてくるかと思います。
卵の賞味期限は「サルモネラ菌」対策のために定められ、卵が本来持っていた「生命の安全」を剥ぎ取り、大量生産、大量流通を基本に卵を塩素消毒液につけて減菌した卵を流通させるための「新たなルール」です。
 サルモネラ菌に汚染された鶏が産んだ卵でも(サルモネラ菌による卵の汚染率は0.1−0.03%ほどと言われます)クチクラ層に守られ、卵殻に守られ、白身に守られ「完全防御」している卵が、「サルモネラ菌」汚染で問題となるのは、卵内で黄身が破裂して白身と混ざったときだけです。
 その「サルモネラ菌」汚染が起こる可能性がある最短日が「賞味期限」と定められ、上記に書いた日数です。逆にいますと、現在の卵は1ヶ月も持たずに卵黄膜が破れるほど品質が悪く(卵自体に力が無く)なっているようです。
 不幸にも卵内に進入した「サルモネラ菌」と卵黄が混ざっても、直ぐに食中毒を起こすほど菌は増殖致しません。このような「サルモネラ菌」と卵黄が混ざることで一番怖いのは、マヨネーズ等の生の卵黄の加工品を作り、常温で長期に放置されるときです。
 運悪く「サルモネラ菌」に汚染された卵でマヨネーズを作り、常温(サルモネラ菌が増殖するに最適な25−35度)に数時間放置しますと、一気に「サルモネラ菌」が増殖して食中毒の原因になります。