物価の優等生 鶏卵 高騰 鶏大量処分 国が奨励で品薄

2013年9月30日 朝刊(東京新聞

 卵の価格下落を防ぐため、鶏の処分に国が奨励金を交付する農林水産省の制度の反動で、卵の価格が昨年の同時期と比べて五〜二割も値上がりしていることが二十九日、分かった。五月以降、制度を利用する生産者が殺到して二カ月間で五百万羽以上が処分され、卵の出荷量が減少。夏の猛暑も卵の生産減少に追い打ちをかけ、価格上昇につながった。生産者寄りの政策と見込みの甘さが、家計に負担をかける結果となっている。(山口哲人)
 この制度は二〇一一年度に始まった「成鶏更新・空舎延長事業」。鶏卵価格の下落が生産者の経営に影響することから、卵を産ませるための鶏(採卵鶏)を処分した生産者に奨励金を交付して、出荷量を減らす制度だ。制度を適用する価格は毎年度変わり、本年度は平均価格が一キロ当たり百五十九円を下回った場合に適用されることになっている。
 今年は五月中旬〜七月中旬に制度が発動。採卵鶏を一羽処分するごとに百五十〜二百円の奨励金が出るほか、焼き鳥用などに処理すれば一羽二十〜五十円で民間の鶏肉処理業者に買い取られるため、「高齢で産卵率の悪い鶏を入れ替えることができる」(養鶏業界関係者)と、制度を使う生産者が急増した。
 奨励金の交付には処分後六十日以上、新しい採卵鶏を飼えないという条件があるため、初夏に減った鶏の数は九月になっても戻っていない。今夏の猛暑で採卵鶏が多数死んだことも影響し、八〜九月の鶏卵の取引価格は過去五年で最高水準に達している。価格の指標となる「JA全農たまご」は九月二十七日現在、一キロ当たりの東京や名古屋で昨年同日比五十五〜三十二円高い。ただ、鶏は成長が早いため、ケーキなど卵の使用が増える十二月までには落ち着く見込みだ。
 農水省の担当者は、価格高騰の一因になった制度について「価格が低迷し、鶏卵農家がつぶれると、逆に安定的に卵を供給できなくなる。需給バランスを取るために制度は必要だ」と説明している。