良い回転

 日常の生活でその場の些細な違いが、時と共に大きくなり大問題として私達を苦しめることがあります。(バタフライ効果、悪循環)今回は鶏の話しです。
 猛暑はまだまだ続いていますが、お盆を過ぎた頃からこの地の最低気温は22−3℃前後に下がり(夏の鶏は最低気温に影響されます。「一息付く間がある」です)、夏の鶏の成績にだいたいめどが付いてきました。
 今年の鶏は、昨年の「不可」の成績から打って変わり「良」の成績を納めそうです。
昨年の「不可」の成績の原因は、大震災により魚粉を購入していた石巻市の会社が被害に遭い(「被害に遭い」等という生やさしい言葉ですませられる被害ではなかったようです。工場や倉庫は大地震津波により崩壊して、会社の会長も津波で亡くなりました)、緊急に購入した魚粉が最低の品質でした。
鶏の餌に混ぜる魚粉は人間が食べる肉の役を成し、毎日のように卵を産む鶏の良質な蛋白源です。合成アミノ酸肉骨粉を利用すれば餌代は下がり魚粉の代換えにはなるのですが、卵の栄養価や品質に問題が出ます。通常売られている『完全配合飼料』は動物性蛋白は合成アミノ酸肉骨粉が主流です。
大震災のため、値段はけして安くなく品質が悪い魚粉を使い(粗蛋白65%と今まで使っていた魚粉と同じ数字だけ品質は保証されていたのです。言い訳になりますが、袋に記入されている数字を鵜呑みにして、新たに購入した魚粉の品質の悪さに気が付くのが遅れてしまいました)、鶏は痩せ、卵が痩せ、産卵が落ちてしまいました。
 この魚粉を使い始めて1ヶ月ほど経った5月末に鶏の異変に気が付き(卵が痩せの時期です)、餌の栄養価を見直したのですが、時すでに遅しでした。
 その時点で順番に「強制的に産卵を休ませて」鶏の体力を一気に回復させ、暑い夏を乗り切るのが一番良い方法でしたが、微妙に産卵数も落ちてきていて配達する卵の数にも困っていたので、餌の蛋白質を良くして、だましだまし夏を乗り切る方法を選択しました。
痩せてバテている鶏に急に良い餌を与えても全ての栄養は吸収できず、鶏の回復には夏の終わりまで時間がかかってしまいました。
「卵が足らない」・・・「鶏に無理をお願いする」・・・「鶏の体力の回復が遅れる」・・・「鶏の弱った体力に暑さが応える」・・・「卵が足らない」と、悪い回転で終わったのが昨年の夏でした。
 今年は春先から鶏達は順調で卵の数にも余裕が出来(「余裕」なら良いのですが、卵が沢山残りますとそれはそれでまた違った問題を抱えてしまいます)、5月から産卵が始まる鶏の体力が十分に付くまで産卵を遅らせ、猛暑を乗り切りました。
このように余裕が出来ますと、猛暑入り前に老鶏を一休みさせることも出来ました。
「卵に余裕がある」・・・「鶏の体力の回復を図れる」・・・「産卵が落ちない」と良い回転が始まります。
 今年は昨年より1割以上産卵成績が良く、例年に比べても3−4%は良かったです。
 一寸した違いが結果的には、大きな違いになってしまうものです。
皆様も「小さな問題」を疎かにしないように気をつけましょう。