農業の規模拡大(3)

 農業の中では養鶏は「1番」と言って良いほど経営の規模拡大が早く進みました。
昭和40年には約320万戸の養鶏農家がありました。どこの農村にも鶏がいた「庭鳥」の時代です。それが10年後の昭和50年には50万7千戸と1/6になり、昭和60年には12万3千戸になり、平成7年には7300戸になり、この頃は3500戸程の養鶏農家数だと言われています。昭和40年からの約40年間で養鶏農家は約1/900になりました。またこの40年間で日本全国で飼養される鶏の数は2割ほど増えています。養鶏農家1戸当たりの規模は1000倍以上になった計算になります。
 現実に1つの農場で100万羽異常(以上)も鶏を飼っている農場が多くなりました。 1つの鶏舎に10万羽以上を飼い、鶏が身動きできないような鶏舎も多く見受けられます。これが農業の経営効率化なのでしょうか?そして本当に効率的なのでしょうか?
このような大規模養鶏場の殆どは太陽や外気を遮断したウインドレス鶏舎です。昼間でも鶏舎内に電気を点し、空気は送風機で出し入れし、卵は自動集卵です。ウインドレス鶏舎の建設は勿論として、日々の維持管理にも多くのエネルギーを使います。また、毎日大量に出る鶏糞は重油で乾燥させて、ダンプで遠くまで配達しているのが現状です。
 規模拡大による合理化メリットが謳われますが、不思議なことに100万羽養鶏も3ー5万羽程の家族養鶏も(私はこれでも大きすぎると思いますが)生産コストには余り違いはないようです。養鶏の機械化を推し進めても、その機械の償却費や維持管理費で機械のメリットは相殺されるようです。
 大規模養鶏場は、飼料会社の確信的なダンピングされた飼料の価格差で(そのつけは中小、零細養鶏場にまわされます)生き残っているのが現状のようです。そして大量のエネルギーを無駄につかい、暗く狭い所に鶏を閉じこめ、薬やビタミンを多投して、鶏糞、騒音、等の公害を地域にまき散らしています。
 これが養鶏の規模拡大の現状です。誰がこのような規模拡大で喜び、益を得るのでしょうか。
 もしかしたら農業の「規模拡大による経営の効率化」とは、除草など非効率な部分を除草剤に頼り地域環境の汚染として、効率化を求めて作物の安全性の不安や野菜のもつ栄養の低下として消費者に押しつけるだけかも知れません。
 地球環境の汚染が問われ、地球の温暖化が緊急の課題の今、農地と都市生活者との生活の距離が近い日本で、農業の規模拡大を押し進める事は地域環境の汚染に繋がる不安があります。本当に農業の規模拡大は日本の農政として正しい決断なのでしょうか。