鶏に太陽の光を(下)

 鶏は一代雑種化(雑種強勢)が進み、鶏に抱かせて雛を孵すのは趣味の世界になり、殆どの養鶏場は孵化業者から雛を買います。
 我が家は産まれたばかりの雛を購入して、自分の農場で育てて大きくして卵を産ませますが、現代の養鶏業は分業化が進み、殆どの養鶏場は育雛業者から産卵が始まる直前の鶏を購入しています。これが効率的な養鶏業です。
 種鶏業者から孵化業者に卵が売られ、孵卵器の中で温め(37.5度前後)られること21日間、卵は雛として産まれます。ここで約半分の雄は淘汰され、先天的異常のある雛も淘汰、廃棄されます。運良く生き残った雛は(我が家のように雄もいっしょに飼うのは異例で、生かされるのは雌のみです)育雛業者によって育てられ、120日令頃に採卵業者に売り渡されます。種鶏場で卵として産まれた命のうちでここまでたどり着けるのは約三分の一程度です。
 育雛期間中の雛の多くは、ウインドレス鶏舎という名の暗く臭い空間でケージに閉じこめられ、鶏病予防のために投薬、注射が繰り返されるストレスの多い日常です。
 人間から見ますと、鶏を狭い所に閉じこめておきますと管理しやすく、運動エネルギーとして消耗される餌が少なく済みます。ウインドレス鶏舎のように自然から隔離しますと、狭い面積で大量の鶏を飼いやすく、性成長も管理統一しやすいです。寒い時期は、換気をできるだけ少なくして、鶏の消耗エネルギーを少なくすることで餌の食べる量を減らせます。その代わり、鶏舎内はアンモニア臭で目を開けていられないほど酷い状態です。
 雛が大きくなり採卵業者に売り渡されるためにトラックに乗せられるとき、そして採卵農場で車から降ろされるとき、運が良ければ太陽の光を拝めるかも知れません。その後約1年間、採卵農場のウインドレス鶏舎の、前後に身体の向きを変えられないほど狭いケージでただひたすら卵を産み続けます。ストレスから他の鶏の羽根をついばむ鶏も多く、死亡率も異常と言えるほど高いです。経済動物とは言え、心のある生き物を機械の部品のように扱うことには無理があります。
通常、鶏は約1年半ほどに命で経済動物としての使命も終わり(終わらされ)廃鶏業者に売り渡され、ペットフード用の肉に加工されます。
 このように殆どの鶏は、雛から死ぬまで(殺されるまで)太陽の光を拝めません。そして大地の暖かさ、優しさを二本の足で感じることのないまま命を終わります。
 さて、私の提案です。「鶏を自由に」とまでは言いません、人間の保護から逃れ、自由にされたら生きていけないのが鶏の現実でもあります。私達が鶏に対して安心できる環境と良い餌を与えれば、鶏は良い卵を養鶏家にもたらします。鶏は素直な生き物です、鶏は養鶏家の仲間です、良き働き手で、我が子に最大の愛情を注ぐ可愛い生き物です。
 本来ならば、ウインドレス鶏舎やケージ養鶏を禁止するか、税金をかけて経営的に成り立たないようにするのが最前と思いますが、今すぐには現実的ではありません。それで、せめて鶏の最後の3日間は、今までの鶏の働きに感謝しそれに応えるためにウインドレス鶏舎から鶏を解放して、青空の下で鶏を放し飼いにして、太陽の光を浴びて、草をついばむ生活を与えることを養鶏場の義務にして欲しいと思います。