月1900円の「食料安全保険」(2)

 それに対して「日本の水田は約10兆円ほどの自然のダムの役を担っている」等々、環境面からの農業の役割についてコスト計算をして、日本の農業の有用性について意見を述べる学者もいます。
 私のような無学な百姓にはどちらの意見も極端に思えます。多くの日本の百姓は、日本の環境のために百姓仕事をしているのではありません。地域環境を破壊したら「百姓仕事にしっぺ返しが来る」事は多くの百姓は身で感じながら、食うて行くために経済とのバランスの中で生活しています。自然に翻弄され、自然の怖さ優しさを知る百姓は「自然を守る」等という大それた事は言えないものです。
 「9.5兆円の補助金を遣い7.5兆円の農業総生産額をあげている」などと言われても私は戸惑うだけです。このような机上の数字の遊びには「お前が百姓でもやれっぺよ」としか言いようがありません。
 消費者が「国際価格に対して高く日本の農産物を購入する」と言う見えない補助金を私達が間接的に頂いているかも知れませんが、私は直接的には農業補助金をいただいたことはありませんし、多くの農家も補助金とは無縁な所で農業をしています。
 しかし現実に約2.7兆円ほどの農業補助金が使われています。これは数字のトリックでなく、国の税金として毎年使われているお金です。日本の国民が日本の農業を守りいざというときの「食料安全保険」でもあります。
 多くの百姓は貰った記憶がないと言い、政府や都市住民はいざというときのためと思い掛け続けている「食料安全保険」の2,7兆円という莫大なお金は毎年どこに消えているのでしょうか?
 この辺のことを精査しておかないと、いざというとき都市生活者も百姓も不審に陥り、不幸な対立が起きるのではと心配です。「年金」ではありませんが、余りにも無責任なお金の使われ方が多いようです。この国のシステムもそろそろ耐用年数に達したのかも知れません。