鶏の秘め事 (下)

鶏の世界も強さは力で雄鶏の魅力に繋がるようですが、それだけがもてる条件ではないようです。どんなに力で押しても「嫌いな雄鶏」には操を捧げない雌鶏もいます。反対に雄鶏に「貴方だけ」と目の前に身を捧げても、「ごめん」と雄鶏に無視されるかわいそうな雌鶏もいるようです。「乱暴で、身体の重い雄鶏なんか嫌い」と雌鶏と恋に落ちて交尾をする雌鶏がいたりと、鶏の世界の恋愛も賑やかです。
賑やかな恋愛の中にも「他の雄鶏との不倫はしない」と言う確かなルールは鶏の世界にはあるようです。自分の彼氏(雄鶏)が怪我をしたりして満足に交尾が出来なくなっても、彼が生きている(同じ部屋に居る)限り、他の雄鶏に身を任せません。(このことについては研究者の間でも意見が分かれるようです。力の強い雄鶏に身を任せると言う意見もあります。)
 雄鶏も若すぎてはいけませんが、若いほど元気で交尾回数が多です。最盛期は1日に10回ほどの交尾をこなすと言われています。しかし鶏も人間と同じで、年をとるにつれて交尾の回数は減ってきます。そんな老雄鶏も新たな雌鶏の部屋に入れると張り切り交尾回数が増えます。鶏も人間に似て(?)正直と言えば正直な生き物です。(笑)
 鶏の交尾は、雄鶏が雌鶏に近づき合図を出し、雌鶏がしゃがみ込み、雄鶏が上に乗り、バランスを保つために雄鶏は嘴で雌鶏の首の後ろの羽をおさえ、雌鶏は尻の羽をあげ、交尾を済ませて雄鶏は雌鶏から降ります。若い雄鶏はけっこう粗相をします。交尾が巧く行きますと雌鶏は喜びを表すかのように、羽を振りながら身震いします。しかしその交尾も雄鶏の粗相で終わりますと、雌鶏が「なに、それ」と言う顔で雄鶏を一睨みして終わりです。数秒の出来事ですが、雄鶏は鶏なりにテクニックを求められます。雄鶏も交尾に慣れてベテランとなりますと、嘴で羽をおさえるのをサボり、「パッパッパ」とより早く済ませます。マンネリと義務の狭間で揺れ動く雄鶏の安直な行動です。何となく分かるような、分からない「鶏の秘め事」です。