農業と人材 月給制、年収300万円、社保加入を

 若者の農業への関心が高まり、農業法人などへの就業が増える中、その一方で、早期の退職が問題となっている。農業経験の少ない従業員を雇用し、OJT研修を行う農業法人などに助成する「農の雇用事業」でも、1年間の研修期間が終わるまでに3割以上が辞めている。
 退職理由の多くは「仕事が合わない」といった就業者の都合によるものだが、その背景には待遇の悪さがあるようだ。時給や日給が多く、定昇がないといった給与体系の問題や、賃金そのものの低さ、社会保険への加入率の低さなどだ。同事業でも、労働時間が長く、最低賃金を割り込むケースが見られる。
 さらに、単純作業の繰り返しでキャリアアップなどの目標が持てず、結婚や家を持つなどの将来設計が立てられないという声も聞かれる。若者が敬遠し後継者不足が深刻な農業に、せっかく新たな人材が入って来るようになったのに、期待が失望に変わっているのだ。 農業が家族経営から雇用型経営に変わりつつある今日、経営を支え次代を担う人材対策は緊急の課題だ。経営環境が厳しい中で、人件費や福利厚生費を増やすことは簡単ではないが、農業が若者にとって魅力ある仕事となることが、結局は、経営発展につながる。
 雇用改善でまず取り組むべきは、農業者の意識改革だろう。正しい労働法制の啓発・普及から始め、そこから給与制度の見直しや労働保険、社会保険への加入などを進めるのだ。 農業での人材確保と定着支援を目的に昨年発足した「全国農業経営支援社会保険労務士ネットワーク」は、当面の雇用改善目標として、(1)月給制(2)年収300万円(3)労働・社会保険への加入を挙げている。経営を生かすも殺すも人材だ。農業の現状ではハードルは低くはないが、農業界全体の目標として取り組みたい。
       全国農業新聞・主張[2011-2-18]




 農業法人が安定的に上記のような条件で雇用できるなら、農業がここまで衰退しなかったとも言えます。
 でも、後ろ向きにものを考えていても始まりません。優秀な農業経営者の努力、そして国のサポートで少しでも農業が良い方向に進むことを期待しています。