森海さん

 先週の木曜日に妻と二人で「森海」さんへ行ってきました。「森海」さんは岐阜県各務原市にあるお寿司屋さんで十数年前からの玉子のお客さんです。一度は食べに行きたいと妻と話していた「森海」さんに意を決して行ってきました。
 店舗の入り口は店舗名を表す看板もネオンもなく(緊張していたので私が見落としたのかも知れません)、自然石で作られた壁にずっしりとした重量感のある一枚板で作られた引き戸が埋め込まれています。 
 引き戸を引き店内に入ると足下は昔ながらのたたき作り、周りは自然石を積み上げた石壁と砂漆喰黄土中塗り仕上げの内壁と障子で囲まれています。
 9寸の栗の大黒柱を中心に、大梁は赤松、胴差しには百年以上も経った唐松と自然の木をふんだんに使った店内に、版築土台の上にカツラやトチノキの大木から切り出した厚板を荒削りのまま乗せてあります。厚板は糠袋で日々拭き込まれ、ニス塗りなどと違う自然の柔らかなつや色をしています。店内は明るく、広々としていて自然に抱かれたような優し空気が充満しています。
 店主の握る寿司は酢飯の一粒一粒がつぶされることのない用に優しく握られ、箸で持とうとしたら崩れてしまう職人技です。寿司は指で食べるものでした。
 口の中でとろける大トロ、香り豊かなマグロの赤身、穴子の味を大切にした穴子(ウナギと勘違いしそうな脂ぎった穴子が多い昨今です)、イクラ、ウニ、そして白子の軍艦巻き、白子の味は絶品で妻の分も私がいただきました。
 そして何よりもたまご屋の私が嬉しかったのは、我が家の玉子が森海さんの職人技でより美味しい、より香り良い卵焼きになり、店主の握る酢飯の上に乗ってきたときは感激しました。美味しい玉子を作るために努力をして、その玉子が寿司職人の技でより美味しく料理される、たまご屋冥利です。