農地のスリーアウト制

 年々農地の耕作放棄が増えています。日本の農地は約500万haと言われ、その約8%ほどの38.5万haの農地が耕作放棄されています。(2005年度)
 十数年前までは不便な山間の田や畑が静かに自然に帰っていましたが、最近は農家の高齢化や農作物の収益性の悪化などによる後継者不足から、税金で耕地整理された広々とした田や畑までが耕作放棄されるようになってきました。
農地は「人間が生きていくために必要な食料を生産する」目的のために宅地や商業地と比べて地税が安く設定されています。また多大な税金を投入して、農地までのアクセスが便利になるように農道を整備して、機械化による規模拡大が進むように農地を平らに、そして広くしています。(余談ですが、このように税金を投入して便利になった農地は宅地や商業地として売り払われることが多いです。農作業に便利な優良農地から宅地化が進む、農作物を作る農家としては泣けてくる話です。農地として地税で優遇され、相続税も優遇され、農地を多大な税金で有料宅地に変えて貰い転売する。「濡れ手に粟」と言いますか、農作物を作るより何十倍、何百倍も儲かります。都会の人達は、このような似非農家を見て「農家は金持ちで優遇されている」と言います。)
このように税金で優遇されている農地は個人の所有物であり、そして公共の所有物でもあります。今の法律では「農地は個人の所有物」の面だけが強調されるあまり「俺の畑を荒らしてなんの文句がある」と開き直る農家が出てきます。(多くの人達は高齢化やのために耕作できないのが現実ですが)
 世界的に食料不足が叫ばれ約10億人近くの人達が飢えている今、食糧自給率が40%と言われる日本の農地の約8%も耕作放棄されています。そろそろ「農地は公共の所有物」の面に光を当てる必要があります。
農地が公共の所有物であるなら、農地を使わなくなったら公に返却して、次に農地を利用して農作物を作る人に貸し出されるべきです。このような農地の流動化をスムーズに進めるために「農地のスリーアウト制」はいかがでしょうか?
 市町村役場に『農地監視委員会』を設置して(既存の農家となれ合いの農業委員会や、似非農家の農地転売金の預金を当てにしている農協ではいけません)、荒れ地になっている農地の利用促進の通達を農家に毎年出すようにします。1年目で1アウト、2年目でツーアウト、農地の利用促進の通達を出しても3年間荒れ地のままの農地は公が没収します。買い取るのではなく没収です、少々手荒い方法ですが税金で優遇してきた農地の公共性を考えたら一考かと思います。
 農地を没収されるのを避け、転売目的のために「捨て作り(要するに種だけまいてその後の管理をしない)」をする人達も出てくると思いますので、農地は農作物を作る場と認定して「農地のスリーアウト制」にかかった農地の転売はいっさい認めないようにします。 農地の転売を認められないなら「捨て作り」は無駄な労力です。
このようにして公に集まった農地を規模拡大を希望する農家や、新規就農者に安く貸し与えれば日本の農業の再生の一歩になると思います。
 戦後の農地解放は農地を小作農に開放しました。そろそろ農業から足を洗いたい農家を農地から解放してやる平成の農地解放を求めます。