卵の黄身の色

 「栄養価豊富なオレンジ色の黄身」、「オレンジ色より栄養価を強化した赤色の黄身」、「黄身と言うのですから黄色が自然な色です」、「玄米を食べさせたレモンイエローの黄身、1個80円」と言いたい放題、賑やかです。
 卵黄の色は「卵黄」という字句に示されているように本来、黄色だと思います。しかし、食べる餌により卵黄色の黄色は、薄いレモンイエローから赤みを帯びてオレンジ色に変わります。野鳥でも同じだと思います。工業製品でない卵の黄身の色が1年中、365日同じ色だと言うことの方が不自然です。
 卵黄色の色素の源は食べさせる飼料により変わり、色素の大部分はカロチノイド系の脂溶性色素(黄色トウモロコシなどから)です。
 しかし完全配合飼料を作るときに(要するに配合飼料会社の製品、殆どの鶏が食べています)経済性を重視するために比較的値段の高いトウモロコシの配合比を減らすことでカロチノイド系の脂溶性色素が少なくなり、そのままでは必然的に卵の黄身の色が薄いレモンイエローになります。何十、何百万羽と飼っている養鶏場(企業です)では、鶏に草や野菜(カロチノイドとビタミンの宝庫です)を給餌することは不可能です。
 また、卵の加工業者からは製品のできあがり時の美しい黄色を求められます。(特に卵焼き、卵焼きを作ったとき全体がきれいな黄色になるように。落ち着いて考えればこれも変です、黄身は重量比で白身の約半分、これを混ぜて卵焼きを作ればできる卵焼きは薄い黄色になるはずです。それを避けるために黄身を赤に近いオレンジ色にしているようです)
 業者に求められた黄身のオレンジ色を一般の消費者に納得させるために「オレンジ色の卵は美味しい、栄養価が高い」と養鶏業界あげて、積極的に意味不明なことを消費者の頭に刷りこんだようです。
 そのように業者から求められたオレンジ色の黄身を作るために、完全配合飼料では赤色の着色料を添加することになります。
 そうすると「オレンジ色の黄身は着色の色だ」となり、「黄色だ、レモンイエローだ」になります。不毛です。
 卵の黄身は食べさせる餌によって変わります。多くの鶏は1年中、完全配合飼料を食べさせられ卵の黄身の色が変わることもないでしょうが(農場で赤色色素を添加して、より赤い黄身を作る方もいるようです)、私や、私の仲間のように自家配合している養鶏場では卵の黄身の色は季節や鶏個体により変わることが多いです。できるだけ変わらないように努力はしていますが。
 野菜や雑草の給餌量によって、夏のトマトやニンジンなどの赤色系野菜が多いとき、カニ殻やエビ殻の給餌は黄身の色を赤くします。友人が干しぶどうを鶏に大量に給餌したときは黄身が茶色になったようです、茄子やピーマンの大量給餌は黄身の色をくすませるようです。イカの内臓はイカ墨により黄身の色を黒くします。
 米や麦の多用は、黄身の色を薄いレモンイエローにします。このように、自家配合で季節により食べさせるものを変えますと黄身の色も必然的に変わります。
 卵の黄身の色にあまり重きを置かないでください。業者は黄身の色をいかようにも変えられますので。
 黄身の色でわかるのは、オレンジ色の黄身の多くは完全配合飼料で育てられている鶏の卵です。黄色、レモンイエローの黄身は自家配合飼料で育てられた鶏の卵が多いです。
 鶏の生理や、栄養、餌についてある程度勉強している養鶏家なら、肉骨粉の入っている完全配合飼料より自家配合飼料の卵を私は推薦します。
ところが、ここが問題なのです。殆ど鶏について勉強もせず「自分勝手な狭義な自然、安全」と大声で唱える養鶏家が増えています。虐待に近い(本人は自分の頭で考えた「自然と」信じていることが多いですが)飼い方をされている鶏の卵は、値段だけが高くて卵の栄養価は貧弱です。この件についてはまた後日。