鶏の一日と一生(3)

 食事が終わり、水を飲み、腹は満ち足り、後は雄、雌での食後の体操になります。
 「体操」と言っても鶏がラジオ体操をするわけもなく、雌雄での交尾の時間です。鶏の交尾は特別「食後」と決まっているのではなく、日が陰り始める夕方が多いです。
 鶏には「電気を消して暗いところで」等と言う交尾に対して恥じらいや照れはないようです。太陽の下で、生き物として堂々と「明るい交尾」に励みます。
 だいたい雄鶏10羽に雌鶏150羽程が一部屋に入っています。それがいくつかのグループに分かれるのですが、平均すると雄鶏1羽に雌鶏15羽程が1グループです。しかし鶏の世界も計算通りには行きません。
 強い雄鶏は付き合えないほど沢山の雌鶏に囲まれ、鶏のハーレム・グループを作り出します。小羽数の雌鶏との家庭的愛情を守り、実直な付き合いを大切にする雄鶏もいます。努力はしたものの、運悪く雌鶏に恵まれないで一生童貞?で過ごす雄鶏もいるようです。
 賑やかな恋愛の中にも「他の雄鶏との不倫はしない」と言う確かなルールは鶏の世界にはあるようです。自分の彼氏(雄鶏)が怪我をしたりして満足に交尾ができなくなっても、彼が生きている(同じ部屋に居る)限り、他の雄鶏に身を任せません。(このことについては研究者の間でも意見が分かれるようです。力の強い雄鶏に身を任せると言う意見もあります)
 雄鶏も若すぎてはいけませんが、若いほど元気で交尾回数が多です。最盛期は1日に10回ほどの交尾をこなすと言われています。そして一度の交尾でその後に排卵される卵は約1週間は受精していると言われます。
 鶏の交尾は雄鶏が雌鶏に近づき顔を見て合図を出し、雌鶏がしゃがみ込み(決定権は雌鶏にあります)、雄鶏が左足から雌鶏の上に乗り(不思議ですが殆どの雄鶏は左足からです)、バランスを保つために雄鶏は嘴で雌鶏の首の後ろの羽をおさえ、雌鶏は尻の羽をあげ、交尾をすまて雄鶏は雌鶏から降ります。
 雄鶏も交尾に慣れてベテランとなりますと、嘴で羽をおさえるのをサボり、「パッパッパ」と1秒以内の早業になります。マンネリと義務の狭間で揺れ動く雄鶏の安直な行動です。何となく分かるような、分からない「鶏の秘め事」です。
 夕方になり秘め事の時も終わり、薄闇のなか鶏たちは順次止まり木に止まり、寝る準備に入ります。寂しがり屋の鶏たちは隣の鶏と身体を「ピタッ」とあわせ、静かな寝息を立てて夢の世界に入って鶏の1日が終わります。