あら養鶏(鶏の動物性蛋白)

 私は国産の鰯を乾燥粉砕した魚粉を鶏の餌に使っています。漁船に使う重油の値上がりなどから、鶏の餌に使う魚粉が一時の2倍ほどに値上がりしています。
魚粉の値段の高騰以上に人間がそのまま食べてもおいしい鰯を「鶏の餌にする」ことへの心の痛みもあり、昔から魚粉を使わない鶏の餌について資料を調べて色々と実験(ためして)みますが、未だに良い解決策は見つかりません。
日本で飼われている多くの鶏たちが食べている『完全配合飼料』には動物性蛋白として肉骨粉が使われています。その補助として少々の魚粉が使われることもあります。
 BSEの問題が表面化してから日本で作られている肉骨粉には牛の廃棄物は(多くは内蔵肉です)使えなくなり、鶏と豚の廃棄物で作られています。配合比率は鶏6割、豚4割ほどといわれています。このような廃棄物で作られた肉骨粉を鶏の餌の動物性蛋白として再利用しています。「再利用・リサイクル」と言えば聞こえは良いですが、鶏に共食いをさせているのが日本の養鶏の現実です。
 共食いは鶏の微妙な栄養バランスを狂わせ(鶏以外でも同じだと思います。「共食い」は神が禁止した行為だと私は信じています)雛の発育障害を起こします。また肉骨粉を作るときに残ってしまう悪臭が卵の黄身に移り、生臭いにおいの卵が多くなり消費者からの「生卵では食べられない」と苦情が増えます。
 発想を変えて動物性蛋白を使わないで、植物性蛋白のみで鶏の餌を考えたことがあります。植物性蛋白にリジン、メチオニンなどの合成アミノ酸を添加することで産卵率の維持は可能ですが、卵の栄養価が落ち(孵化率、育成率の低下として現れます)ます。「殻がついていればすべて同じ卵」と割り切ればこのような合成アミノ酸での養鶏も可能かと思いますが、合成アミノ酸を使うことは「良い卵を作りたい」と言う私の願いとは相反して卵の品質を落とします。
 ならば、昭和2−30年代に流行った「あら養鶏」(魚の内臓を煮て、くず芋や糠に混ぜて鶏に食べさせる)を考えてみますが、この方法も現代では多くの問題を含んでいます。 魚屋が少なくなり「あら」を集めるのに時間とエネルギーがかかるようになり、管理の悪い「あら」の腐敗臭が黄身に移行することがあり生臭い卵を作る原因になます。    
魚の値段が上がり「あら」の殆どが内臓になり、それも私たちの食の変化から大型の魚の「あら」が多くなり、「あら」を鶏の餌に使うとき大型魚の内臓に蓄積しやすい重金属の問題が無視できないほどになってしまいました。勿論、このような重金属で汚れた海の環境を作ったのも私たち人間ですが。
 昭和40年代後半に一部の地域で流行った「ミミズ養殖」(ミミズを養殖して、ミミズの糞を堆肥として、ミミズを動物性蛋白として販売して利益を上げる目的で農村で一時はやりました。堆肥もミミズも売れなく、機材を売りつけた会社だけが儲かり、農家は架空の利益に踊らされました)によるミミズの利用も一考ですが、鶏の産卵成績も上がらず、卵が生臭く、惨憺たる結果だったようです。
 養鶏の多くの先人たちが鶏の動物性蛋白の自給のために努力をしてきましたが、良い卵を作るには良質の魚粉が一番良いようです。
魚粉の値段が上がると、しばしば粗悪品の魚粉が(出汁をとった後の鰹節、卵をとった後の鮭、売れ残りやかびた干物を粉砕した魚粉まがいなどの栄養価や品質管理に疑問のある品物)出回ります、高くなった餌代を考えますと「使いたくなる」ことがありますが、鶏の産卵率や卵の品質を下げてしまうことが多いのが現実です。
 良い卵を作るために、ここは我慢です。