食の科学

 新聞やテレビの広告で「レモン100個分のビタミンC入り、私たちが1日に必要とするビタミンA、B、E、Kが添加された加工食品、ビタミンやヨードを強化した玉子、シジミの100倍の鉄分、ポリフェノール、、、」と食べ物が原子記号や栄養成分にありがたそうに分解され、それらの栄養成分が安直に肥満や私たちの健康問題を解決してくれると勘違いさせる宣伝が毎日の様に流されています。
 私たちの日常の食文化が食料加工企業が先導する食の科学にすり替えられ、加工食品がいかにも健康に良さそうな謳い文句と共に食卓の隅々まで入り込んでいます。
 農作物の生産者も、料理人も、消費者も、食料加工企業が利益を上げるために使う莫大な宣伝費や、食料加工企業のために研究する研究者達により作り出される「食の科学分析により作り出された安全、栄養」に、癌にならない、痩せる、健康に良いなどと知らず知らず踊らされています。
私たちはレモンをビタミンCの補給のために食べるのではありません。また、レモンに含まれるビタミンCは、色々な食品に添加される合成ビタミンCとは別物です。レモンの栄養価(含むビタミンC)は、私たちの体内に入り胃や腸で分解、吸収されて始めて私たちの栄養となります。私たちの体内はそれぞれ違う体内細菌をもち、人種や年齢、体質により消化吸収も違うはずです。レモンに含まれる繊維やビタミンCや多くの栄養素が一体になって「レモン」と言う食べ物を作っています。食べ物は原子記号や栄養成分に分解され理解できる物ではありません。私たちが毎日食べている農作物を、脂肪、炭水化物、ビタミンなどに単純に分解できません。その証拠に今の科学では、どれだけのお金をかけても工場では栄養成分からキャベツやレタス等の野菜はできません。私たち人間も栄養成分の補給で動くロボットではありません。
 肉食を中心とした歴史をもつ人達、野菜や根菜中心の歴史をもつ人達、それが食文化として受け継がれてきて今の私たちの身体、健康があるのだと思います。
 私たちの健康を守るために大切にしなければならない食文化が食料加工企業のグローバル化と共にずたずたにされ、ファストフードが世界中を席巻しています。食文化を簡単に捨てられても私たちの身体はファストフードや大量の糖質に対応するようには簡単には変われません。だから病気にもなります。
 でも「レモン100個分のビタミンC入りのジュース」の宣伝は、何となくレモン100個分を食べて、良い栄養をたくさん取り入れたような錯覚を私たちに起こさせます。これは完全に詐欺です。
コストを下げるために不健康に育てられた肉や卵、温室で促成栽培された野菜、化学肥料で連作される野菜に穀類。それらの農作物の栄養やミネラル不足を隠すために、ビタミンや色々な添加物を入れて「健康に良な食べ物」に化粧直ししているのが現代大量生産されるファストフードです。
本末転倒と言いますか、儲けるための方法と言いますか、これが食料加工企業が押し進める食の科学の世界です。
少々値段が高めでも、有機農産物や露地野菜を食べ地元に根ざした食文化を守る方が私たちの健康にも優しく、長い目で見ますと安上がりな生活に思えます。