桜咲く

 南の地方から駆け上がる「桜咲く」のニュースに春の訪れを感じ、桜花は冬の寒さに耐えた私たちの心と身体を春の陽の中に解放して、新しい生活に希望と夢を抱く方が多い季節です。「桜咲く」と花見に託け、花見酒を思う飲んべえも多い季節です。私も酒好きで、どうしても酒飲みの立場で物を見がちですが、その私でもテレビのニュースで流される最近の花見の酔っぱらいの乱痴気騒ぎには辟易させられます。
 「桜咲く」と多くの日本人が浮き立ち、そして酒に溺れるこの季節ですが、昨今の不景気で不幸にも就職が決まらなかった多くの学生がいます、リストラされた会社員、派遣社員がいるのが「桜咲く」今の日本の現実でもあります。酒は程々に、そして桜の花に負けないように美しく呑みたいものです。
 テレビを見ても、新聞を読んでも「リストラ、就職難のニュースが聞こえてこない日はない」と言えるほど不景気な昨今ですが、相も変わらず農業、農村は高齢化、人手不足の状態が続いています。
 都会の過剰労働力と農業、農村の人手不足、過疎化問題を解決するために、政府は新規就農者に簡単な審査で農業補助金を貸し出し、生活費の給付や住居の提供まで手厚い保護をする市町村もあります。私の住む市も、新規就農者に毎月約10万円ほどの生活費を3年間補助しています。
 はて、さて、簡単に貸し出す農業補助金や生活費などの手厚い補助は本当に新規就農者のためになるのでしょうか?疑問です。
 田畑があり、農機具に農業技術もあり、子どもの頃から農作業に親しんできた頑丈な身体をもち、困ったときに相談できる親類や知人をもつ農家が、農業で生活が成り立たないために農業を辞め、息子に継がせないのが今の日本の農村、農業の現状です。
 失礼ながら、リストラや就職難から「農業でも」と農業補助金を借りて農業を始めて成功するでしょうか。
 農業は生産も販売も自然に影響される仕事です、汗水流して1年間頑張っても一度の台風で農作物が全滅することもあります、豊作は喜びより苦しみに繋がりやすい産業です。 このように収入が不安定な農業で、新規就農者に借金を背負わせるのは正しい農政と言えるのでしょうか。
 そんなに儲からない農業生活の始めに、生活費としてお金をあげるのは新規就農者に優しい農政でしょうか。「食うために働く」これが人間の基本で有り、まっとうな生き方だと思います。人間は弱い生き物です、生活費の補助で上げ底され農業生活を始めた人間が真摯に農業に打ち込める物でしょうか。
新規就農者への簡単に貸し出す農業補助金や、生活費の補助等は、農業への憧れ、農業への希望を見いだそうとする人達を殺すための農政ではと思うこの頃です。