ベターな養鶏

バンクーバー冬季オリンピック開催中です。ミーハーの私はカーリング競技にはまっています。(昨日のロシア戦は日本に勝利の女神が微笑み奇跡の逆転をしましたが、その後のドイツ戦は日本選手のミスが目立ち敗戦。そして今日のスイス戦は実力の違いを感じさせる試合でした。厳しい肉体的な鍛錬を要求されるオリンピック種目の中で、カーリング競技は「私にもできる」と勘違いさせる競技です。そして競技は野球に慣らされた日本人向きでゆったり流れます。テレビでちょっとルールを覚えますと(覚えた気になると)直ぐに、監督やコーチの気持ちにさせてくれる楽しい競技です。勿論、氷上のチェスと言われるカーリング競技は頭脳と体力が求められ、オリンピックに出場するには他の競技に劣らないほどの努力と鍛錬が必要なのは当たり前なのですが。)
「オリンピックは参加することに意義がある」と言いつつも、選手は入賞を、メダルを、光り輝く金メダルの「頂点」を求め、観客である私たちも期待します。
「日本一、世界一」の称号は魔物のように魅力で、多くの人達が色々な世界で求め続けます。鶏の卵でも時々「日本一」に近いようなコピーを載せた広告に出会いますが、卵の味や栄養価等の品質の判断は相対的で、スポーツのようにはっきりした勝ち負けの結果が出ません、卵は食べ物であり消耗品ですので芸術作品のような「オンリーワン」を争うような物でもありません。
 養鶏家の端くれとして私自身も「日本一の、ベストの品質の卵」を求めつつ日々頑張っていますが、消耗品であり経済性から逃げ切れない鶏の卵は「ベストより、ベター」を求めるのが現実的です。
では「ベターな卵」とはどの様な卵を指すのでしょうか?
 通常のウインドレス鶏舎のケージ養鶏は4ヶ月令まで育てられた大雛を購入して、5ヶ月令(導入後1ヶ月)で卵を産ませ、その後約10ヶ月ほど卵を産ませて鶏を廃鶏にします。その後の1ヶ月を鶏舎消毒として休ませ、同じことを1年に1回ずつ繰り返します。自然界では鶏の寿命は15年ほどと言われますが、ウインドレス鶏舎の鶏の命は約15ヶ月になります。廃鶏にされた鶏肉も堅く筋っぽく、多くは廃棄かドッグフードの原料にされます。
 大量飼育、大量廃棄のウインドレス鶏舎のケージ養鶏は卵の価格は魅力的ですが、栄養価や旨味に問題を抱え、鶏の飼養環境や地域の環境には大きなマイナスを与え、社会全体の環境で見たらけして「ベターな卵」とは言いにくいです。
 とは言え、オリンピックで金メダルを目指すような「1個数百円の卵」は日常的な食べ物からは外れるように思えます。(蛇足ですが、これらの卵が「1個数百円」の価値があればまだ救いはあるのですが。にわとり屋から見て疑問の多い卵もあります。)
 いつも言うことですが卵は卵です、特別貴重品にすることはありません。多くの人達が卵を美味しく食べられるように、鶏にもう少し良い餌を与え、もう少し良い環境を与えることにより「ベターな卵」が当たり前になることを望みます。