鶏の知能(3)

 鶏はなかなか記憶の良い生き物です。ちょっと鶏の肩を持ちすぎかも知れませんが「鶏は三歩歩けば忘れる」ほど鶏の記憶は悪くはありません。
 ちょっとした手違いで、育雛時の雛に水をあげるのを忘れた事があります。私にとっては「ちょっとした手違いで」ですが、パサパサした小麦粉のような餌を食べさせられたあげく「飲む水が無い」は雛にとっては生死をかけたストレスだったと思います。
 その雛たちは廃鶏になるまで「水に意地汚い」鶏でした。(要するに、水が十分目の前にあるのに、焦って身体を水で濡らして「ガッ、ガッ」と水を飲み、水飲みの周りを濡らしました)
 狸、狐、野犬などに襲われた鶏の群れは、そのときの恐怖が記憶に擦り込まれたためか、その後もいつも落ち着きが無く、ちょっとした音などで群全体が騒ぎます。
 畑で茄子が大量にとれて、食べきれないために鶏に給餌する事があります。
 始めて茄子を見た鶏たちは鳴きながら茄子を遠巻きにして警戒します。10−20分ほど群全体が鳴き騒ぎ、探求心旺盛と言いますか、珍し物好きの鶏が2−3羽警戒しながらも茄子に近寄り、足で蹴り「パッ」と離れ、嘴でつつきながら茄子の様子を見ます。つついた茄子が口に入り「お、これはいける。美味しいじゃないか」と茄子を食べ始めます。それを見ていた周りの鶏たちも我先に嘴を出して茄子を食べ始めます。
 茄子の美味しさを記憶鶏は、翌年になって1年ぶりに茄子と出会っても恐れることもなく、直ぐに茄子に飛びつき食べ始めます。
 鶏は一夫多妻ですが「夫」や「妻」を忘れて浮気をしません。身体に毒な物は食べません。鶏は命がけで子どもを守ります。「昔の記憶も覚えている」そんなお利口な鶏ですが、飼い主(にわとり屋)の命令は直ぐ忘れるようです。