お宅の卵は何が違うのですか?

 「お宅の卵は何が違うのですか?」とお客さんに尋ねられることがあります。
 簡単に答えられそうで、答えが出しにくい質問です。「うーん」と考え込み「値段が違います」などとふざけるわけにもいきません。
 鶏の飼い方が違う、餌が違う、卵の栄養価も違う、味も香りも違う。その様な違いに対して私は自信と自負を持って鶏を飼っています。このような卵の違いを「大げさでなく、間違いを少なく、出来るだけ親切に相手が理解できるように説明しよう」と考えますと、一言では説明は難しく、戸惑ってしまいます。私の実力不足とも言えますが。
 色、形、外見は赤玉鶏であれば殆ど同じく「卵は卵」です。市販されている卵との極端な違いや、我が家の卵に神秘的な「何か」を期待されて「お宅の卵は何が違うのですか?」と問われると、困ります。
 医薬品と勘違いさせるような「特殊卵」も多く見かけますが、卵は卵です。卵本来の味や香り、栄養価を大切にするのが養鶏の王道と私は信じています。
 私と同じような鶏の飼い方をしている人で卵の安全性を極端に強調する方もいますが、「我が家の卵は市販の卵の比べて安全です」とは、一寸恥ずかしくて私は言えません。
 事の善悪は別として、市販されている「普通の卵」を多くの人達が毎日食べて「食の安全面で」問題は殆ど起きていません。「サルモネラ菌汚染された卵」が時々ニュースになりますが、全体の卵の流通量から考えますと僅かです。僅かだから許せるという問題ではありませんが、今回は「サルモネラ菌汚染された卵」についてではないので、この問題はここまでとします。
 一部の消費者は「抗生物質漬けの卵」を問題視します。しかし現実的に企業養鶏場で抗生物質を多用しているのでしょうか?
 正確な所は私には分かりませんが、薬の効果と病気の治療に掛かるコストを考えますと「抗生物質漬けの卵」は現実的ではありません。高価な薬を使い鶏の病気を治すより、機械の部品のように採算の合わない鶏は淘汰して、新しい鶏を導入した方が合理的な経営のようです。
 基本的には市場に出回っている卵の多くは『安全』だと私は考えています。長期に大量に卵を食べても病気になりません。
 では『安全』なら全ての問題が解決するのでしょうか?
 卵は薬ではなく食べ物です、『安全』意外に食べ物として卵本来の味や香り、栄養価も大切な要素だと思います。
 薄暗く、臭く、ホコリだらけの鶏舎の中で、身動きの出来ないような狭いケージに閉じこめられ、ストレスのためか私達のような平飼いでは考えにくい高い死亡率、人間の利益だけを考え合成ビタミン剤や、合成アミノ酸肉骨粉などで誤魔化された鶏の餌、このような環境の中の鶏から産み出される卵は『安全』ですが『健康的な食べ物』とは言い難いです。
 「鶏たちに良い環境と良い餌を与える」このような当たり前のことを継続することが良い卵の生産に繋がると信じています。
 「当たり前」のことを、日本中の養鶏場で行えば「お宅の卵は何が違うのですか?」などと言う質問や、疑問もなくなるのですが。