農業の規模拡大(2)

 1反歩を大きなトラクターで耕すより50ヘクタールを耕した方がより効率が良いのは確かです。機械の償却費、人件費なども安くすみ、農作物の価格の低下として消費者に還元できます。土地利用型農業の経営規模の拡大による生産性の向上は比較的分かりやすい話です。しかし日本の農家の平均農地面積は(北海道をのぞく)約1.8haです。アメリカの平均農地面積は日本の約100倍、オーストラリアは1800倍ほどと言われます。
人口が多く、斜面の多く雨の多い日本の土地条件や日本の農地の値段の高さを考えますと(農業委員会という農家代表による農地転用許可は、仲間内での「なーなー」の世界で農地法ザル法と言われ、農家不動産屋を増やしています)農地の規模拡大によりアメリカやオーストラリアと農作物の価格で戦うのは不可能に近いことだと思います。
 また、土地利用型農業以外では農業の規模拡大は「人件費」の問題にぶつかります。殆どの野菜の収穫、イチゴなどの果物の収穫は人力によって行われているのが現状です。
 アメリカが日本に安い値段でブロッコリーなどの野菜を輸出して、イチゴなどをEUに安い値段で輸出できるのは農奴のような環境で働かされるメキシコからの違法移民の力が大きいと言われています。日本に大量に輸入される中国からの野菜も低賃金で長時間働く(働かされる)中国農民の努力によって維持されているようです。
 少々話はそれますが昨年の「毒入り餃子」事件で、中国の出稼ぎ農民が工場で餃子を作るために1日16時間も働かされていることを私は日本のテレビで知りました。その餃子を日本の生協が(生活協同組合)販売する、中国の農民の農奴のような犠牲の上に私たちの「安い食品」が成り立っていたのです。それを日本の生活協同組合がするとは。暗澹たる気持にさせられました。「価格崩壊」の名の下で、私たちには見えにくい(見ない)新たな21世紀型の奴隷が増えているようです。
 アメリカや中国の野菜と価格で勝負するために、経営規模を拡大した日本の農家も「農業研修生」という便利な名で中国の農民を雇い、農奴のような環境で酷使している農場もあり、時々問題が表面化して新聞やテレビのニュースになります。
 経営規模の拡大は本当に効率的でなのでしょうか?そしてその効率は誰にとって良いことなのでしょうか?
 経営者、労働者、消費者、地域経済、地域環境、国、地球、、、、。地球環境が瀕死の状態の今、「誰への利益が一番良く、大切にしなければならないか」真剣に考えなければならない問題です。