家畜の異常な世界

 我が家の鶏たちの産卵は、サラリーマンや公務員とほぼ同じで週休二日です。平均しますと鶏たちは週に5個の卵を産み、年に約250個ほどの卵を産みます。白色レグホン(白い卵を産む鶏)は年に300個ほど(週休1日)卵を産むと言われます。
にわとり屋を長年やっていると、年に250個や300個の卵を産む鶏を「当たり前」と思うようになり、烏骨鶏のように年に4−50個の卵しか産まない鶏の方が異常に感じられるようになります。
鶏はなぜ卵を産むのでしょうか?人間はより多くの卵を鶏から採るために品種改良をして、高産卵に耐えられるように濃厚飼料を与えて、鶏の環境を管理して来ました。でも「卵を食べる人間のために鶏は卵を産む」と言い切ったら身も蓋もなくなります。
人間に改良されたとは言え鶏は鳥、自分の可愛い子孫を残すために卵を産んでいると思いたいです。となると、自分の産んだ卵を孵し育てる時間も無いままひたすら卵を産み続ける現代の鶏は異常と言えます。烏骨鶏のように自分で抱けるだけの卵(12−15個ほど)を産んだら卵を孵し始め、孵った雛を約2ヶ月ほど育てますと雛は自立して親鶏と離れて生活を始め、親鶏はまた卵を産み始める。このようなサイクルを年に3回ほど繰り返す烏骨鶏の方がまだ生き物としての鳥らしく思えます。
 殆ど動かない環境の中で高タンパクの餌をただひたすら食べ続けて、人間の成長で考えますと4−5歳児が大人ほどの体重(6−70kg)に肥満して食肉になるブロイラー(肉鶏)も異常な生活をしています。同じ日令で採卵鶏なら5−600g程の重さがブロイラーなら2500g程に成長します。細胞が肥大して採卵鶏の4−5倍に肥るブロイラーは雛のような童顔で大人の身体をもつ異常な鶏です。
 このような家畜の異常な世界は鶏だけでは無いです。乳牛は年に7−10千リッター程搾乳されると言われます。産まれた子牛を育てるのに必要な牛乳は100リッター程です。それが年に7−10千リッターも搾乳されます。その僅かと思える子牛への100リッターも代用乳に置き換えられ母親からの乳牛は商品になるようです。
豚は人間の食肉のために胴長に改良されあばら骨が増え、霜降り牛肉は「死と隣り合わせの肥満の芸術品」と言われます。
 このような家畜の品種改良や濃厚飼料による肥育や飼育は、家畜にストレスを与え内臓疾患を増やし、不健康で薬に頼る畜産の世界を作り上げてしまいました。
 どうしたらよいのでしょうか?産卵数の少ない鶏に換えていくべきでしょうか?増体重の低い(餌効率の悪い)ブロイラーに換えるべきでしょうか?乳牛は?豚は?肥育牛は? 家畜に関わる人間だけでなく、それらを消費する人達も交えて私たち人間と家畜との関係を見直すときかも知れません。