日本の農業の現実

「選挙管理内閣」等と新聞に書かれた麻生氏が新たな総理大臣の任につき、それに伴い総選挙の日程が新聞の1面を飾るようになってきました。総選挙が近くなり自民党民主党も「農家にあめ玉をしゃぶらせろ、農家の口があめ玉でふさがれば文句も言えないだろう」と「農家の所得保障、農業補助金」と争うように農家にこびてきます。「ばらまき補助金」を貰う農家にとっては幾ばくかの今日の糧にはなりますが、はて、さて、このような「ばらまき補助金」は日本の農業の明日の希望になり、食糧自給率の改善に繋がるのでしょうか?暗い気持ちになります。
自民党も、民主党も、そして共産党も「日本の農業は、日本の農業こそ」と選挙が近づきますと農家の顔色をうかがいます。日本の農業の現実はどうなっているのでしょうか? 「基幹的農業従事者」は2005年現在224.1万人。そのうち約40%が70歳以上で、企業で定年の年齢の60歳以上は70%になります。(農業センサスより)十年後、二十年後の日本の農業はどうなるのでしょうか?
 「農業収入だけで農業再生産を維持できる」(要するに農業で「食う」人です)には年間売り上げが700万円以上は必要だと言われています。農業の利益(人件費としてとれる率)は20−40%ほどだと言われますから「700万円以上」は妥当な数字だと思います。日本の販売農家は198.1万戸、そのうち約1割の農家が700万円以上の農産物を販売しています。そして約3割の農家は「土地持ち非農家」(農作物を殆ど販売していない)です。(農業センサスより)農業で食べている人が1割です、それが日本の現状です。
 地球上に8億5200万人もの栄養不良で悩む人達がいて(世界食料白書2005)、同じほどの数の人間が肥満で悩んでいます。日本は食糧自給率(カロリーベース)39%、世界一の食糧輸入国です。兼業農家は資産である農地を手放さず、農業経営の規模拡大も進まず、農業生産で頑張っている人達が昨今の経済的苦境により、離農、廃農しています。
 専業農家の廃業は荒れ地を一気に増やします。そして現在の農業経営状況では新規に農業をはじめる人もいません。(自給的、家庭菜園的農家は増えていますが)  このような現状で「ばらまき農政」は正しい選択なのでしょうか?