特発性顔面神経麻痺(7)

7月11日(金)5時起床。
 入院もあと1日を残すだけとなった。ステロイドの効果なのか、不思議なくらい体調が良く私の肌艶も良い。今回、私は「特発性顔面神経麻痺」で入院したのだが、その治療にステロイドが使われたためか、今まで悩まされていた手の湿疹は綺麗になり、嗜眠気味な睡眠時間も調整され入院してからの体調はすこぶる良い。もしかしたら退院後 「特発性顔面神経麻痺」が直れば、以前のように元気に働けるのではと思う事もある。
14時。看護助手さんから「眼科の先生がお呼びです」と声がかかる。「眼科?」と思い「眼科ですか?耳鼻科の間違いじゃないですか?」と訪ねると「眼科です、急いで下さい」とせかされる。1階の眼科に慌てて行くと「呼んでいません」とあっさり断られる。仕方ないので2階のナース・ステイションに戻り確認する。耳鼻咽喉科とのこと。
 耳鼻咽喉科に行き問診、29点。少しずつだが私の病気は改善されているようだ。その後部屋に戻り読書。看護助手さんが謝罪に来る。「看護師さんが眼科と言っていたんですが、、、」とボソボソ言っていた。
 18時夕食。病院での最後の夕食。私の入院中、妻は1日も休まず私を訪ねてくれた。感謝、感謝。
21時半。異臭がしてくる、頭が痛くなる臭いだ。部屋中が「うんち」の臭いで充満している。慌てて部屋を出てナース・ステイションに行く。看護師に「部屋で異臭するのですが」と言うと「分かりました、強制ファンを回しておきます。暫くホールで待っていて下さい」と言われ、落語を聞きながらナース・ステイション前のホールで時間を過ごす。
23時、部屋の異臭はいっこうに治まらない。確か隣の爺さんは入院後便秘が続いており、看護師が「下剤を飲ます」と言っていたが、その下剤が効いたのだと思う。ならば「もとを絶たなければ」この臭いは治まらないはず。あきらめてホールで過ごす。
24時、看護師が私の部屋へ行く。野次馬根性と言いますか、悪臭の原因を知りたくて私も部屋に戻る。「**さんのベットうんちだらけだわ。おしめからもはみ出て、布団まで汚れている」と言いながらも、二人の看護師さんはテキパキとおじいさんの汚れた尻を吹き、パンツやシーツを取り替えていく。その献身的な姿には頭が下がる。
 1時半、そろそろ悪臭も治まったかと思い部屋に戻る。まだ悪臭が気になるが、少しでも睡眠をとるために自分のベットに入る。
 便秘が解消したためか、隣の爺さんは気持ちよさそうな寝息といびきをかいている。今度はその音が気になり眠れない。最低、最悪の最後の夜だ。
7月12日(土)4時起床。
 隣の爺さんはまだ気持ちよさそうに寝ている。爺さんを殴ったり、怒ったりするわけにはいかないが、排便したら直ぐに看護師に知らせてくれれば、私の不快は少なくて済んだのにとあらためて思う。まあ良いか、今日でこの病院ともおさらばできる。医者に言われても、もう1日たりともこの病院にはいたくないが。
9時点滴。最後の点滴も無事終了。11時、荷物をまとめて退院。