夏の卵  破卵と痩せた卵 

 昨年より20日ほど早い梅雨の入りです。高温でジメジメした梅雨は病気や細菌が繁殖しやすく、鶏にとっても余り快適とは言えない日々です。でも、次に控える太陽がガンガン照りつける真夏よりは「まだ良い」季節です。夏は鶏と、にわとり屋には鬼門です。
 鶏は全身を羽根に覆われていて汗腺もなく、真夏でも毛皮を着て過ごす「我慢強い生き物」です。時々、夏は羊のようにバリカンで鶏の羽根を刈り取ってやったら「鶏も気持ち良いのでは」と思う事もありますが、羽根のない鶏はみすぼらしく、滑稽で、鶏への虐待です。話はそれました、「我慢強い生き物」とは言え気温が35℃を超える猛暑日の日中は、鶏たちも喧嘩や交尾をする余裕もなくなり、口を開けて息をして鶏舎の日陰で暑さをじっと耐えています。暑い真夏の日中の養鶏場は、鶏の鳴き声一つ聞こえない静寂に包まれた不思議な空間になります。
 気温が32−3度を超すと、熱射病でケージの鶏は死亡が出ると言われています。この頃の地球温暖化で気温が32−3度を超す事は当たり前になり、この地では最高気温が38度を超えた事もあります。幸いな事に、我が家では熱射病で鶏が死んだ事はありません。我が家の鶏たちが比較的暑さに強いのはケージの鶏と比べて体力があり、日陰で砂遊びをしたりして厳しい真夏の西日を避ける空間があるからだと思います。
 ケージの鶏と比べて比較的暑さに強いとは言え、最低気温が25℃を下らない熱帯夜が続きますと、鶏たちも夏バテが進み極端に餌が食えなくなります。でも鶏は暫くの間は自分の身体を削って卵を産み続けます。「餌がまともに食えないのに卵を産む」これが夏のにわとり屋の悩みとなります。暑さのために夏は鶏の産卵も体力も落ちる事は毎年の事です、5月末頃から鶏が夏を乗り越える体力を付けるように栄養価の良い餌に切り替え、鶏舎の風通しを良くして、産卵の疲れた鶏には休みを与え、万全の準備をします。
 しかし厳しい暑さが続きますと、鶏たちは暑さを凌ぐために水を沢山飲み、食べたカルシュウムがその水と共に体外に流れ出て、カルシュウム不足から卵殻の弱い卵が増え破卵の原因になります。暑さのために餌がまともに食べられなく「痩せた卵」(栄養価が劣る)が増えます。外見で判別できなかった卵がお客さんの所に配達される事があります。このような問題をできるだけ避けるために、夏は厳しく卵の選別をして、新鮮な卵の販売に心がけています。でもこの頃は年々夏が暑く、長くなっているような気がします。最後はお天気(暑さ)しだいの我が家の養鶏です。