企業養鶏と反企業養鶏について (6)

 いろいろブツブツと書き連ねました。しかし、人それぞれ価値観に違いがあり、一概に「良い卵、悪い卵」と単純に分けられないのも現実です。価格だけで卵を選ぶなら、スーパーなどに並んでいる白色の殻の卵を選ぶのが良いかと思います。そして大きさはMSからMほどの卵がはずれが少ないと思います。
 企業養鶏と反企業養鶏、どちらにも良い卵があると思います。卵に関する知識は消費者より生産者の方があります。消費者を騙すことも簡単だと思います。昨今の食品偽装の話ではありませんが、最後は養鶏家のモラルが問われるような気がします。
 卵はほぼ毎日産卵されます。卵は生鮮食品ですから、長期の保存にも向きません。「その日の卵を、その日に売り切る」がたまご屋の基本です。卵は工業製品とは違い日々の生産に多少のばらつきがでます。暑い夏などは産卵数が落ちます。
 我が家でも産卵数を年間通してできるだけ平均化するように鶏の導入をしていますが、産卵鶏の切り替え時期(新しい鶏が卵を産み始め、産みが悪くなった鶏を廃鶏に出す時期です)は約1ヶ月ほど卵が足らなくなります、そして新しい鶏の産卵がピークを迎える頃の1ヶ月は卵が余り気味になります。産卵が安定期に入ったその後の2ヶ月は「私の心が落ち着いている」産卵数と販売数のバランスがとれる期間です。このような繰り返しが年に3回ほど行われます。お客様の注文の変更もあります。 
 「奇跡」の卵はありません、そして卵は工業製品と違います。奇跡を売り物にする卵を買う前に「眉につばを付けてみて下さい」。卵は生きている鶏が子孫を残すために産み出した「生命」です。鶏の日々の体調の変化で産み出される卵の品質も変わります。消費者が工業製品に求めるような均一化された理想の卵と、日々生き物としての鶏と接する養鶏家の現実との溝を埋める努力は大切だと思います。
 少々値段が高くてもこだわりの卵を求めるなら、養鶏場を見学するのも一考です。
 生卵を割り観察してみましょう。白身の盛り上がり方も大切ですが、白身の色も注意して下さい。新しい卵ほど白身が少し濁っています。白身が鼈甲色しているのはビタミンB群によります。品質の悪い卵ではなく、栄養価の高い卵です。次に、黄身を舐め臭いを嗅いでみましょう。生臭さがあれば『完全配合飼料』を食べさせた大量生産の卵に間違いはありません。ほんのりと甘い黄身が良い卵だと思います。
ネットショッピング、ホームページなどコンピューター上で気楽に卵が買える時代になりました。良い卵の生産に励んで来たものの消費地と遠く、販売に悩んでいた養鶏家にとっても、販売経路が増えて経営の安定に繋がります。ネットショッピングはスーパーなどで売られている特殊卵以上に「玉石混淆」の世界です。「その日の卵を、その日に売り切る」がたまご屋の基本ですから、注文の不安定なネットショッピングで大々的に卵が販売される事に疑問を持って下さい。大手ネットショッピング市場で大量に宣伝、販売している所は避けましょう。宣伝費をかけて大量に販売できるのは、利益幅が大きく(要するに、通常生産卵を宣伝で「特殊卵」に変えて、高く売ろうとしている)大量生産している養鶏場と考えられます。
ホームページなどに鶏の飼い方や、その人の鶏への思いが綴られていて、「養鶏教」の様な「奇跡」を売り物にしていない生産者を吟味して、卵を注文してみて下さい。