企業養鶏と反企業養鶏について(2)

 スーパーやデパートに行きますと1パック100円前後で特売されている卵から、1個数百円もする高価な卵まで多種多様な卵が並べられています。
 日本人が大好きで、世界で一番食べるとも言われる卵が何でこんなに価格差が出るのでしょうか?どの卵が良い卵なのでしょうか?何で1パック100円前後の低価格で卵が販売されるのでしょうか?1個数百円もする卵はそれだけの価値があるのでしょうか?疑問は尽きません。
『物価の優等生』と言われ安価でスーパー等で売られる卵の多くは、経済合理主義の名のもと、身動きもできないほどの狭いケージに鶏を閉じこめて、暗くアンモニアの臭気が充満しているウインドレス鶏舎の鶏に『完全配合飼料』を食べさせて生産された卵です。ここでは生産され、消費される大切な卵のことは余り考えられてはいません。「殻が付いていれば全て同じ卵」と、価格、餌効率のみが求められます。本末転倒の世界です。
 その様な養鶏家の努力の結果「殻が付いていれば全て同じ卵」とスーパーに足元を見られて安売り競争に巻き込まれ、養鶏家は借金の山を築き体力のない(飼料会社に保護されない)養鶏企業が倒産していきます。生き残った養鶏企業は借金の回収を少しでも早く進めようと「増羽(鶏を増やす)」して、また同じ低卵価を繰り返します。
 この滑稽とも言える養鶏業界の経済合理主義が『物価の優等生』などと言われる卵価をここ40年ほど維持してきたようです。そして卵の品質と栄養価を確実に下げてきました。
 このような鶏も、養鶏家も、そして消費者も幸福に成れない行き過ぎた近代養鶏からの脱却を唱え「自然卵養鶏、放し飼い養鶏、有機養鶏」などの鶏の環境を大切に考え、鶏を飼う人達が増えてきました。増えたとは言え、日本中で生産される卵のうち上記のような環境で生産される卵は1%も無いでしょう。
 鶏の飼い方、食べさせる餌などを見直すことにより生産される卵が良くなり、養鶏家も、消費者も幸福にな「三方一両得」になる養鶏方法と思います。そして、環境への負荷も考えますと「四方一両得」とも言えるかも知れません。
 しかし近代養鶏の技術であるケージや薬、完全配合飼料等に頼らないた養鶏は、養鶏家の技術、経験がもろに問われます。ここに大きな矛盾と言いますか、問題があります。
 長年の経験と技術のある養鶏家の殆どは「近代企業養鶏と言う言葉が醸し出す、近代科学・利益、企業家」と言うイメージに踊らされ、その道を邁進しているのが現状です。