穀物価格の高騰

トウモロコシ、小麦、大豆などの国際穀物価格が高騰しています。数年前の価格の「2−3倍が当たり前」、デフレのこの時代には考えられない高騰です。
 近年の穀類価格の高騰の原因は、異常気象による不作、経済発展による中国の穀類消費の増大、原油価格高騰により代替エネルギー生産として穀類の使用、日本のバブルの戦犯を守るために日銀が長期にわたり低金利で市中に大量のお金を流したため、色々な意見があります。
 ある新聞にこの穀物価格の高騰で面白い記事がありました。
「パンは毎日食べます。だから10円、20円の値上げでも家計に響きます」と年金生活者の声をのせていました。その新聞を読み進めますと「日本の食糧自給率が低いため、今回のような穀物の価格高騰に対処できないのだ。外国に大切な食料を依存すると今回のような価格高騰が起きるので、日本の自給率をあげるべきだ」と、何となくこの新聞を読んだ人達の気持が、丸く収まるように記事がまとめられていました。
でも私には「?????」です。何かしっくりしない記事です。
まずこの新聞にも、小麦の国際価格が過去2年間で3倍に値上がりしたと書いてあります。日本政府の小麦の売り渡し価格は昨年10%、今年の4月から30%の値上げが決定しています。日本政府は「国際価格に比べて高い値段で小麦を販売していた」から国際価格が3倍にもなった小麦の販売を、40%ほどの値上げで押さえているとも言えます。
多くの国民が給料が上がらないで苦しんでいる昨今、小麦の価格を3倍に上げたら「暴動ものです」。実際、主食のトウモロコシの価格高騰でメキシコなどでは暴動も起きているようです。この日のために「穀類価格の安全弁」を作ってくれていた政府に、私達国民は、喜ぶべきか悲しむべきか分からない問題ですが。
このデフレの時代に、穀物価格が2倍、3倍です。原油価格が上がったとは言え、アメリカなどの穀類生産農家の手取りは数倍になり、ウハウハ笑いが止まらないはずです。
 この穀物価格の高騰で、さぞかし日本の農家は「やっと、俺たち百姓が儲かる時代が来た」と喜んでいるかと言いますと、そうでもありません。
まず日本の畜産農家は(私も含めて)、餌の殆どが輸入穀類に依存しているのが現状です。それがここ数年の穀類の価格高騰で「廃業できる人は幸せ」と言われるぐらい新たな借金が膨らみ、身動きできない畜産農家が増えています。私の耳にも、畜産農家の借金による自殺の話が聞こえてきます。悲しく、惨い話です。
米価格の低下により、経営が苦しくなっている米農家が「トウモロコシや小麦、大豆 生産に乗り出す」などと言う話も余り聞こえてきません。生産過剰なミカンなどの果樹、野菜農家が穀類生産に乗り出す話も聞こえてきません。「作る作物がない 」と悩んでいる農家も、農業で一旗揚げようとする人達からも本格的に穀類生産に乗り出すという話は聞こえてきません。
 穀物の国際価格が2−3倍になった今でも、日本の国内生産価格と国際価格では3倍ほどの価格差があり(正確には測れません。ものが違いますし、品質も違います「平均するとまだこれくらいの差はあるだろう」と言う数字です。日本の生産価格が高いのです)、国の補助がなければ国際価格と太刀打ち出来ないのが日本の穀物生産の現実です。
さて、これらのことを踏まえて「日本の自給率を上げた方が宜しいのでしょうか?」
パンの値上がりで騒ぎ、日本の自給率の低さを嘆く日本の消費者の本心を知りたいです。