(7)リロングエのホテルで

 空港からホテルの車でリロングエ市内へ。
 車で30ー40分ほどの道のりは殆ど建物もなく、赤土に覆われた大地に所々に綺麗に植林された薪用の林が並ぶ景色が続いています。 
 ホテル(日本のホテルを想像しないでください。日本の海外青年協力隊員だった女性と結婚した韓国人が経営するコウリアン・ロッジです。平屋建ての清潔なロッジでした)で荷物を解き、一息入れます。
 息子にお願いしてドルを現地の通貨クワッチャに両替します。1クワッチャが約1円。マラウイの最高額紙幣は500クワッチャです。300ドルほど両替したら、現地の札が沢山来て、ちょっと大金持ちになった気分になります。
 その後リロングエ市内にあるJICAのマラウイ事務所を訪ねて、マラウイ国内の旅行についての危険情報や、旅行に当たっての注意点を説明され、JICA前で皆で記念写真を撮ってからコウリアン・ロッジへ帰ります。

 夕食はコウリアン・ロッジで子供達と共に韓国料理を楽しみます。
 息子とは1年半ぶりの再会ですが、男同士、特別話すこともなく、私は飛行機での長旅の疲れもあり、9時頃には息子と別れて部屋に戻りました。
 寝る前にテレビをつけると、NHKの海外放送が日本語でニュースを流しています。
 マラウイで韓国料理を食べて、日本語のNHKのニュースを見て過ごす、世界は確実に狭くなっています。
 シャワーを浴びて、蚊帳が天井からぶら下げられたベットに、息子から教わったようにベットの頭の方を少し持ち上げ、蚊が入り込まないように気を付けて、素早く潜り込みます。その後は夢も見ないで爆睡です。
 耳元で「ブーン」と言う蚊の羽の音で目が覚めます。「ドキッ」として慌てて頭の上に置いた時計を見ますと、まだ2時過ぎです。
 疲れた頭で「ブーン、蚊の羽の音、マラリア」と考え、「さて、蚊は蚊帳の中か、それとも外か。それが問題だ」と蚊帳の中で身を縮めてマラリアの恐怖と戦います。
 とは言え、起きあがって正面からアフリカの蚊と一戦交える根性もなく、悶々と不安で眠れない時を過ごしていますと、窓の外がしだいに明るくなってきました。
 朝の光が見えると人間は何となく心強くなります、覚悟を決めて「ええい、くそ蚊め」と怒鳴りつつベットを飛び出てシャワーを浴び、テレビを見て早朝の時間を潰し、その後朝食に行きました。
私の朝食は、パン、ジュース、サラダ、ハム、そして卵焼きです。
 たまご屋としてはマラウイの卵の品質に興味があり、ホテルの従業員が殻を割り目玉焼きを作るのを「じっー」と見ていました。
 息子の話では「マラウイでは、卵の新鮮さを見分けるために耳元で振り、ポチャ、ポチャと音がしなければ(カラザが切れて黄身が動くと音がする)新鮮だと判断する」と言う話があるほどで、日本では考えられないような古い卵が流通しているらしいです。
 目の前で割られたホテルの卵の品質は、特に新鮮とも言えませんが、息子が言うほど古い卵でもありませんでした。