台風9号

 台風9号が関東地方に上陸しそうです。自然の優しさに感謝しつつ、自然に翻弄され、土にしがみつき、無謀と思いつつも自然と闘う百姓にとって、台風は一夜で今までの努力を破壊するる「恐るる」自然災害です。
 ニワトリ屋は台風の強風で鶏舎が吹き飛ばされない限り、せいぜい鶏舎内に雨、水が入り「卵が汚れる」ほどの被害で済む事が多いです。
 夏野菜は強風にあおられ根を傷め、植え付けが終わった白菜などの秋野菜は水に浸り、病気で全滅する事も多いです。でもよほど酷い災害で無ければ、野菜は種の蒔き直し等で損害を軽減して、百姓は「明日がある」と堪え忍ぶ事ができます。
 しかし、1年分をこの実りの秋に収穫するブドウ、梨、栗、そしてリンゴにミカンなどの果物は「明日がある」などと悠長な事を言ってはいられません。サラリーマンには理解できないと思いますが、1回の台風が1年の努力の全てを奪い去っていくのです。この1年丹精かけた「実り」が一夜で無に帰ってしまうのです。自分の労賃は勿論の事、肥料や農薬、資材に投資したお金も全て帰っては来ません。最悪の時は、何年もかけて育てた「果樹」が殺され、出稼ぎ、離農の現実を百姓に突き付ける事もあります。
 「働いたのに収入がない」サラリーマンには理解し難い事です。
百姓は、台風前に畑に暴風ネットを張り、排水溝を直し、弱い建物は補強して、収穫できる農作物は家族総出で収穫して、耳栓をして、祈り、じっと台風が通り過ぎるのを待ちます。