低卵価の秘密 (上)

低価で入ってくる輸入飼料の恩恵と、日本人の几帳面さでケージに1羽、2羽、3羽、そのケージを一段、2段、、、とアパートのように組み上げ、暗く身動きもできない狭いスペースに大量の鶏を閉じこめ、飼われる鶏の苦痛や生産される卵の品質のことも忘れて、養鶏家はただひたすら自分たちの利益を求め、養鶏業の効率化、機械化を追求して突き進んで来ました。
 鶏という生き物を機械の部品と同列に考え、工業のような合理化を推し進め、社会からは「卵は物価の優等生」と歓迎され、養鶏業者はその進む道に自信を深めて今日まで頑張ってきました。
 その努力の結果が「養鶏家自身の首も絞める」ほどの最近の低卵価です。
 殆どの養鶏場は赤字経営と言われていた2年ほど前に比べ、鶏の飼料価格は1.5倍ほどに上がり、ガソリンやその他の資材も軒並み上がっています。それなのに卵価は「誰かに操作されているかのように」採算割れの価格を低迷しています。今の卵価ではほぼ100%の養鶏場は赤字経営だと思います。
 養鶏業界の雇用人件費は最低賃金すれすれです。不景気と言われる日本ですが、きつい、汚い、危険等と沢山のKが並ぶ養鶏業界では日本人の雇用が難しく、「研修生」と言う名の外国人の違法雇用の噂もちらほら聞こえて来ます。
 「賃金を安く、外国人労働に頼る」その努力の結果?、養鶏経営者が「儲かっている」なら不快ですが資本主義社会の日本ですから何とか理解できる話です。
 しかし現実は、養鶏経営者の多くが「多額の借金のために、養鶏業を辞めたくとも辞められない」、現代の農奴のような状態に置かれているのが偽らざる養鶏業界の今の姿だと思います。
 なぜこのような「鶏も、生産される卵も、そこで働く従業員も、そして経営者も、全てが不幸になる不思議」なことが起こり、誰が現代の農奴を作り出しているのでしょうか?そして、この悲惨な話は養鶏だけに終わらず「世界との競争、農業の規模拡大」と勇ましい号令の元、企業に垂直統合されつつある他の畜産、農作物生産者に起こりつつある話です。
 このように農業が経営的に厳しい時代に、農業者を増やし「この国の食糧自給率を上げる」と言うことがどのようなことか、全ての国民が真剣に考えるべきだと思います。