鶏の卵が産まれるまで  上

 卵の重量のおよそ6割(36−9g)ほどで産まれた小さな雛も、5ヶ月も経つと成鶏に成長して卵を産み始めます。成鶏になった鶏は体重1.6−1.7kgほどに成長し、その後少しずつ大きくなり2kg以上まで成長します。
 産み始め鶏の卵は40gー45gですが、その後は年齢と共に卵も大きくなっていきます。二黄卵などの規格外卵は、排卵がまだ安定しない産卵初期に多く産まれます。鶏の産卵は、異常に大きな卵子精子の10億倍ほどの体積があると言われています)が体内で成長することもなく、そのまま体外に排卵されますから、産卵と言いましても人間のお産とは違います。
 現代の鶏は産卵個数も卵重も改良され、卵は大きくなり(卵黄の大きさは余り変わらず、白身が増えただけですが)沢山の個数を産むようになりました。
 その結果今では、鶏は平均65gほどの卵を年間で250個から300個余りも産み「卵を生産する機械」(1年間で体重の約10倍の卵を生産します)と言われるほど改良が進みました。鶏に餌と水を間違えないで与えておきますと、素人が飼っても「卵をどんどん産む」それが現代の鶏です。プロのたまご屋にとっては「経験の技」を見せる場も少なくなり、あまり面白くない鶏になっています。
 「卵を生産する機械」を得た現代の養鶏業には、卵の品質や鶏に対する愛情や管理技術は求められず「机の上で計算機をたたき、出来るだけコストを抑えて安く卵を作る」効率的な生産だけが求められます。
 鶏を大量管理するために暗闇の中に押し込め、鶏は暗闇とアンモニア臭に覆われたウインドレス鶏舎で太陽の光を浴びることもなく、卵の生産の機械として一生を終えます。正確にいますと、肉にされる(殺される)当日はカゴに押し込められ、トラックに積み込まれるために外に出されます。カゴの中から太陽の光を拝み見て、一路、屠殺場に運ばれていきます。ウインドレス鶏舎の鶏は、太陽光からのビタミンDが不足するために、合成ビタミンで補います。なんたる無駄、なんたる矛盾、大いなるお馬鹿な人間の知恵です。
 鶏の運動エネルギーによる飼料の無駄を考え、できるだけ鶏が動かないようにケージに閉じこめ、鶏はストレスから他の鶏の羽を食いちぎります。そんな鶏の無言の「声」を人間は無視して、鶏舎効率を第一に考えそのケージを数段重ね鶏を詰め込み、鶏は上段の鶏から降り落ちる糞に悩まされながらの一生です。
 鶏は経済動物です、しかし「暗く、臭く、身動きも出来ない」こんな生活を鶏は求めているのでしょうか?あまりにも酷すぎます。