(2)ノスリ

 大空をゆったりと円を描きながら飛び、獲物を見つけたら空から急降下して捕まえるノスリ、我が家の鶏も攻撃するノスリは「招かざる客」です。
 私は長い間ノスリ「トビ」と勘違いしていましたが、友人の指摘で鳥類図鑑を調べましたら、我が家の鶏達を悩ませているのはノスリのようです。
 私の言い訳ではないのですが、多くの人も「ノスリ?」かと思います。余り聞き慣れない鳥類の名前です。
 ノスリは、草原などの開けた環境を好むタカの仲間でトビよりも少し小さく、体の色は全体的に褐色をしていて、のどにある黒い模様とノスリ独特の扇形をした尾羽が特徴です。
 ノスリという名前は、韓国でタカを示す「スリ」という言葉と野原に好んですむ習性から「野にすむタカ」という意味でつけられたようです。ノスリは繁殖期を迎えた春先は「ピィーヨ、ピィーヨ」という鳴き声をよく聞きます。 
 このノスリが我が家の鶏達を襲います。晴天で、鶏達は気持ちよさそうに鶏舎内で砂浴び(鶏のお風呂です)していますと、ノスリは近くの木にとまり、周りの様子を確認してから急降下して、鶏を捕まえようとします。鶏達は金網で守られていますからノスリには捕まりませんが、ノスリの急降下に驚き、圧死することがあります。特に大きな恐怖になれていない育成中の鶏が圧死します。
 外は秋晴れ、私が近くにいられるので鶏達を散歩させていました。ノスリは近くの木から一羽の雌鶏に目を付けて、急降下して鶏の背中に乗り鋭い嘴で鶏の喉下を一噛み。物の数秒です。
 私が鶏を食肉にするために鋭敏な刃物で喉下を切っても、鶏がおとなしくなるまで数分かかるのですが「ノスリが一噛み、その場で雌鶏はころり」です。ノスリは鶏の急所を知っているのでしょうか?。不思議です。
 私の見ている前で、ノスリは倒した鶏の羽を嘴で丁寧に抜き、落ち着いた態度で鶏の肉を堪能して悠々とご帰宅しました。
 こんな事もありました。
 鶏達の大きな悲鳴で慌てて鶏舎に駆けつけると、ノスリが鶏舎内の鶏の首を押さえて困っています。ノスリの急降下で驚いた鶏達が鶏舎の反対側に逃げて、その場で重なり団子状態になったようです。「チャンス」とばかりにノスリはその団子状態の鶏の近くに行き、運良くノスリの足が入る程の穴から一羽の鶏の首を押さえたようです。しかしノスリもそこからは困りました。鶏のクビは押さえたものの、金網のため鶏の身体は鶏舎から出ません。そんな状態の時、私が鶏舎にたどり着いたようです。
 私を見てノスリは逃げるべきか、それともこの美味しそうな獲物を何とか取り出そうかと考えたようです。しかしノスリの欲が勝ったようで、私が近づいても鶏の首を放しませんでした。欲に駆られて動けないノスリを、鶏を捕まえるように私は片手で簡単に捕まえました。
その後3日間ノスリは鶏カゴの中で飼われ「鶏は私の物、君の物ではない。君は私の嫌いなネズミやマムシを捕まえるように。反省しなさい、そして仲間にも伝えるように」と日に何回と私に説教をされました。
ノスリは神妙な顔で私の話を聞き少し反省の色も見えましたので、野に放してあげました。しかし私の恩もノスリには忘れ去られ、その後も私とノスリと鶏達の関係は改善せず、ノスリの恩返しは未だありません。