朝の一仕事

「おはよう」、「久しぶり」、「元気」、鶏達へ元気に朝の声をかけます。
私が体調を崩してからは長男の仕事になっていた朝の卵採りですが、今日から長男は2泊3日の九州旅行。
 私は久しぶりの朝の卵採りです、ちょっと緊張します。
でも身体は覚えているもの。軽トラックで鶏舎に行き、車から降り、静かに一呼吸して鶏達の鳴き声に耳を傾けます。気になる鳴き声(通常は雄鶏の威風堂々とした歓迎の鳴き声と、雌鶏の私に甘えたような鳴き声です)がなければ、いつものように、始めに育雛鶏舎に行きます。
 右手で鶏舎の戸を開け、右足から鶏舎に入り、目で雛達の動きを追い(病気や怪我で動きの悪い雛を見分けます)、耳で部屋全体の音を聞き分け(怪我や病気で困っている雛の声、外敵の侵入などの音を聞き分けます)、部屋の臭いを嗅ぎます(病鶏等の鶏糞は嫌な異常臭が有ります)。時間で言いますと物の10秒程の時間ですが私の五感はフル回転します。
 それから雛達が驚かないようにゆっくりと鶏舎内を一周して、動きの悪い雛、今朝の雛の糞の色、餌と水の残量を調べます。合計でも1−2分の仕事です。
 「ゆっくりと鶏舎内」これは大切なことです。
 餌を食べている鶏も、水を飲んでいる鶏も、砂浴びしている鶏も、恋を語る鶏達も私が鶏舎内に入ったことを意識せず、そのままの日常が続くことが最良です。
 これがストレスの少ない落ち着いた鶏を育てる秘訣です。「頭で分かっていても」の世界で、誰でもが出来そうで、案外出来ないことです。それが手癖となって鶏達の性格として鶏舎全体に現れます。鶏飼いも、人により向き不向きが有るようです。その後、成鶏鶏舎での卵採りです。これも癖なのでしょうが、私は年齢の若い鶏から卵を集め始めます。育雛鶏舎と同じように鶏舎を見回し、卵を採り始めます。成鶏になりますと、部屋での鶏の強弱や雄を中心とした仲の良いグループも定まり、各部屋のそれぞれの鶏達の生活の場が安定します、私はそれぞれの部屋の鶏達を「絵」として記憶できるようになります。卵も定まった順番で産卵箱から集めます。鶏達は同じ産卵箱に産みますので、毎日の記憶でその部屋の変形卵や奇形卵の産み落とされる産卵箱の場所や、個数をだいたい把握しておきます。
 鶏舎内で卵を集めていますと、雌鶏がじゃれてきます。このように人を怖がらず近づいてくる鶏は良い(良く産卵をして、鶏舎内でも比較的強い立場に有ります)鶏達です。「元気」、ここでもまた挨拶をします。
奇形や変形卵数、卵の重量感、卵殻色を確認して、私の前日までの卵の記憶と比べて変化がなければ安心です。
何らかの変化(異常や問題点)が有れば、早急に対応を考えます。だいたいは餌の栄養価の変更で問題が解決します。早く適切な対応は鶏にも、我が家にも被害を最小にします。
朝の卵の個数をノートに記入して、選別、パック担当の妻の所に卵を持ち帰ります。これが私の朝の仕事です。