(7)マムシ

毒蛇として恐れられ、滋養強壮に良いと珍重されるマムシは我が家の「招かざる客」です。マムシはカラスやタヌキのように鶏や畑で悪戯するわけでありません、おとなしい生き物のようです。しかし、私は蛇が大嫌いです。
 農村に住んでいますと、草むらの中で人間を避けるように「そーっと」うずくまるマムシや、手足のない醜い身体をくねらせ道路を渡っているマムシと、年に1−2度「バッタリ」と出会います。私には最悪、最低の瞬間です。ムラの老人達は2−3m先からマムシの独特な?生臭い臭いでマムシに気が付くと言いますが、私には分かりません。たい肥の中(発酵して暖かいです)等にマムシがとぐろを巻いて寝ていることが多く、臭いでマムシが分からない私は手で直接たい肥や野菜の残滓の積み上げた物に触りません。くわばら、くわばらです。
農村でマムシに「バッタリ」出会ったとき、私のように慌てて逃げるか、草刈り機を持ち出してマムシを切り刻む(家の近くの畑や草むらでマムシと出会ったときは、家人がマムシに噛まれないようにマムシを切り刻み、確実に殺します。草刈り鎌ではマムシに飛びつかれそうなので、マムシから2mほど離れて戦える?草刈り機を私は使います)人間と、「ラッキー、儲けた」と思い、マムシの頭を押さえ捕まえるための木切れを探す人に別れるようです。
数年前、ムラの道でマムシと出会った私は軽トラックでひき殺そうとしましたが(私はマムシには残酷です)マムシに側溝に逃げられ、殺すことを諦めかけていたとき、ムラの老人五郎さんが通りかかりました。「なにしてんだ」と問われ、側溝のマムシについて話と「なんで捕まえないんだぺ」とちょっと呆れ、五郎さんは近くの篠竹を折りきり、その竹でマムシの頭を押さえ絞めて「このふてえ腹だ、子供がいっぱえ入ってる」と言いつつ、そのマムシの頭から皮を剥き始めました。
 親マムシの腹の中から9匹の子マムシが出てきて、子マムシは腹から出ると直ぐ鎌首を持ち上げて噛みつこうとします。しかし子マムシの威嚇も五郎さんの足で踏みつけられ、命と共に消えていきました。
 皮の剥かれた親マムシを家に持ち帰るように五郎さんに勧められましたが、丁寧にお断りしました。私はウナギは美味しく食べますが、マムシ(関西ではウナギのことを「マムシ」と言うらしいですが)は食べません。