(5)タヌキ

お腹が「ポコッ」と出た立ち姿で、片手に酒瓶を持つタヌキの姿は愛嬌があります。ユーモラスな姿で描かれることの多いタヌキは、昔話やことわざにも登場して、日本では古くから多くの人々に親しまれてきた野生動物です。この愛嬌のあるタヌキこそ我が家の鶏達の最大の敵「招かざる客」です。
 地域によってはムジナと呼ばれることもあるタヌキは雑食、夜行性です。
 時は草木も眠る丑三つの時、タヌキは4−5匹家族総出で我が家の鶏舎に食事にきます。実際にタヌキが鶏舎に来る時間は、夜の10時から12時頃が多いです。
 美味そうな我が家の鶏を目の前に、タヌキは鶏舎の下から潜り込もうと穴を掘り、金網の弱い所を真剣に探し回ります。不幸にもタヌキが鶏舎内に侵入しますと、被害は狐の比ではありません。真っ暗な中、タヌキの家族が鶏を捕まえるために鶏舎内で暴れ回り、かみ殺し、遊び、多くの鶏は恐怖から圧死します。
 今までで最悪なタヌキ被害事件は、一部屋で100羽以上の鶏がタヌキにかみ殺されたり、圧死させられた惨殺事件です。この鶏舎は家から離れた栗林を借りて建てた鶏舎です。鶏の恐怖の鳴き声も遠くて我が家まで届かず、朝いつものように卵採りに行きますと、鶏舎内に鶏の死骸が山となり、僅かに残った鶏達が恐怖の体験を私に伝えるかのように「よろよろ」と私に近寄ってきます。
 鶏舎の中は鶏の死骸、死骸の山。鶏の死骸をそのままに出来ません、重い足取りで鶏の死骸を片づけた記憶が、今まででも鮮明に思い出します。
 鶏舎に侵入されたら最悪なタヌキですが、狐と違い家族で行動するためにタヌキ道が出来やすく(同じ所を歩くため)、対処は(捕まえる)比較的簡単です。
 車で道路を走っていますと、交通事故に遭ったタヌキを多く見かけます。その原因はタヌキは夜行性で、夜間のドライバーは道を横断するタヌキの発見が遅れることと、「ヘッドライトの光がタヌキの目に入ると、タヌキは動けなくなり立ち止まる」と言われたり、「接近する車に驚いたタヌキが気絶(いわゆるタヌキ寝入り)してしまう」との諸説がありますが、正確なことは分かっていないようです。
 何台もの車に轢かれて、ボロ布のような姿をさらすタヌキの死骸を見ますと、タヌキに痛い目にあっている、にわとり屋としては「ざまー見ろ」と思いつつ、人間が自然や野生動物に対する傍若無人の振る舞いに、恐れと悲しみを覚えます。