プロの味覚

 鮨店、焼肉店、ケーキ屋、レストラン、パティシエなど、料理のプロの方が我が家の卵を料理の素材として使ってくれています。
先日、高級レストランのシェフから「この頃、卵の味が薄くなったような気がするのですが?」と電話がありました。この電話の5日ほど前に鶏の体調や、産卵数などの変化から餌に問題があることに気づき、早急に餌の改善を始めていました。餌の間違いによる栄養不要の鶏から産まれた力の弱い卵(栄養価が低く、味の薄い)の微妙な味の違いに気づき、電話をくださったシェフの味覚に「さすが、プロの味覚」と感銘と恐れが私の最初の反応でした。日常の卵生産に追いまくられ、慣れと惰性から「良い物を生産する」緊張感を忘れやすいたまご屋にとって、僅かな味の変化を見逃さない料理人の味覚は、緊張感をたまご屋に取り戻させるありがたい電話でした。
ここからは少々言い訳になりますが、今回の鶏の栄養不良は「餌代をケチった」のではありません。
この頃、動物の飼料としてホエーが注目され始めています。ホエー(乳清)は、乳(牛乳)から乳脂肪分やカゼインなどを除いた水溶液で、ヨーグルトを静かに放置しておくと上部に液体が溜まり、これがホエーです。ホエーの中には乳酸菌があり、腸内細菌を整え、抗病性にも優れ、肉の味などを良くするようです。「卵の味を、鶏の肉の味を少しでも良くしたい」と日々思っている私は、早速ホエーを使ってみました。
 ホエーのアミノ酸バランスや全体の蛋白などの栄養価は、私が鶏に必要と考えていた量を十分にクリアーしていました。何の疑問も感じずにホエーを使い数ヶ月が経ちました。
 秋口から冬にかけて鶏の体重が減少して、鶏が全体に元気を無くしてきました。病気ではないことは鶏の死亡数や、鳴き声、糞の臭いや色で分かります、寒さのせいにするには今年は暖冬です。いろいろ考えていくとホエーにぶつかります。
 ネットで調べたホエーの資料などから推測すると「鶏のホエーの消化率は悪い」ようです。我が家の鶏には計算上十分な栄養を与えていましたが、ホエーの消化率の悪さから微妙ですが栄養不良になっていたようです。現状に満足せず、少しでも良い卵を生産したいと思い努力しますが、計算したようにはいかない事は多いです。失敗と、反省を繰り返して少しずつ前に進んでいきたいと思います。